ケーキを持った家康が慶次の家を訪れたのは、クリスマスからはずいぶんと早い日のことだった。
 こたつの上に受け取ったケーキの箱を置き、慶次は皿とフォークを取りに行く。家康は大きな身体を震わせて急いでこたつの中に潜り込んだ。
「でもさ、なんで突然ケーキなんだい?」
「コンビニに入ったらクリスマスフェアをやっていてな。慶次と食べたいと思ったんだ」
「家康……」
 慶次は数週間前、家康に告白された。もちろん、友人として好きなのではなく、恋人になりたいのだとはっきりと告げられた。
 普段から恋はいいものだと公言している慶次も、これには戸惑った。男同士の恋に偏見があるわけではないが、自分がその対象になるとは思わなかったのだ。
 困って返事を躊躇ってしまった慶次に、家康は苦笑して時間をくれると言った。気持ちを落ち着けてしっかり考えてほしいから、と。それに甘えて中途半端な関係のまま時間だけが過ぎている。
 しかし家康もアタックだけはやめないつもりのようで、こうして歯の浮くようなセリフをよく言う。しかも爽やかな笑顔を浮かべていうものだから恥ずかしいことこの上ない。
 頬に朱を走らせた慶次は、それを誤魔化すように家康の隣に座った。フォークを渡して、ケーキを食べ始める。コンビニのケーキだが結構美味しい。
「そんな理由で俺のとこ来るなんて寂しい奴だよな、お前も」
 思ってもいない憎まれ口を叩くことしかできない。本当は嬉しくて、頬が緩むのを必死で押さえているのに。
 家康は慶次の態度を気にした様子もなく、ケーキを掬って慶次に差し出してきた。頭に疑問符を浮かべながらも、慶次は素直にケーキを受け取った。
「慶次と一緒だからいいんだ」
 不意打ちで告げられた言葉に、思わずケーキを飲み込んだ。
「なっ、家康、何言って……!」
「当然のことを言ったまでだぞ?」
 咳き込む慶次の背に、家康の手が触れる。慶次は慌てて家康と距離を取った。後ずさる慶次を、家康はじりじりと追い詰める。
「い、えやす? なんか近いっ」
「そうか?」
 首を傾げる家康の口元は笑みの形に歪んでいる。確信犯だ、とわかったけれど、既に背中は壁とぶつかっている。目の前には家康が覆いかぶさるような形で迫ってくる。
 ギクリ、と慶次の肩が震えた途端に、家康がペロリと頬を舐めてきた。
「家康っ!」
「クリームがついていたぞ。全く、おっちょこちょいだなぁ、慶次は」
「だからって、舐めなくても……!」
 顔が熱を持つ。それすらも愛しいと言わんばかりに、家康は目を細めた。
 それがますます恥ずかしくて、慶次は家康の胸を押し返す。
「それに! 俺が答え返すまではこういうことしないって言ってたじゃん!」
「慶次が愛しすぎてな、我慢ができなかった」
「馬鹿っ」
 顔を真っ赤にして逃げようとするが、もはや何の意味もない。嬉しそうな家康に慶次は何も言えず好きにさせるようにした。結局なんだかんだ言って答えを先延ばしにしながら、もう心は決まっているのだから。
 放り出されたフォークとこたつの上のケーキが音を立てて崩れ落ちた。






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家慶! を始めて書きました。
何これなんでこんな恥ずかしいのってなりながら(笑)
家康の台詞が恥ずかしすぎて死ぬ……






2010.12.21.