昼休みになると同時に、三成は脇目もふらず食堂へ行く。
 食堂は毎日多くの人で賑わう。三成自身はあまり人の多い場所は好まないが、彼がここに来るのには理由がある。
「慶次!」
 人混みの中に長いポニーテールを見つけると、三成はそれに向かって駆けだした。目的の慶次は人混みをかき分けて売店へ向かうのに必死で三成の存在に気づいていないらしい。
 楽しそうな表情の慶次に頬を緩めながら、早足で追い付いて目立つポニーテールを引っ張る。慶次の足が止まり、少し驚いた顔をした慶次と目があった。
「三成」
 慶次ははこれから昼食を買うつもりだったらしく、手元に財布を持っている。三成は無意識に手元の弁当を握り締めた。あちこちに視線を彷徨わせてから、背の高い慶次を見上げる。
「慶次、今日も私と昼食をともにしろ。拒否は認めない」
 半ば叫ぶ形のお誘いに、慶次は二つ返事で頷いた。
「もちろんだよ! あ、でも俺まだ昼飯買ってないからさ、先に買ってもいいかい?」
「構わない」
 サンキュ、と言った慶次は三成の頭をくしゃりと撫でてパンを買いに行った。
 触られたところが熱を持っているような気がして、三成は思わず頭に手をやる。当然熱いはずもなく、何度かそこに触れるにとどまった。
 一人意味のない行動をする三成は周囲の目を集めていたが、三成が一睨みすると視線はすぐに散った。
 それからしばらくして、慶次がパンを抱えて戻ってきた。遅い、と怒鳴りつけてから、さっさと歩きだす。後ろからついて来ているのが気配でわかって、少し歩調を緩めた。
「どこで食べるんだい?」
「決めていない。どこか人のいないところを知っているか」
「うーん……」
 食堂はそもそも人が多くて席が空いていない。どこか別の場所を探すのが当然なのだ。しかし、昼休みの時間も限られている。どうにか食堂内に席を見つけ、二人でそこに座った。
「今日もあんたはそれだけ?」
「そうだ。何か文句でもあるのか」
「そういうわけじゃないけどさ」
 パンをいくつも買っている慶次とは違い、三成は弁当とはいえ小さな弁当を持っているだけだ。その量は女子の昼食の量よりもよほど少ない。それで食べたうちに入るのか、とはよく言われるのだ。
 慶次もそれを言いたいのだろう。最初に昼食を共にしたときにも言われたことだ。
「それでもアンタは食べてる方なんだよな」
 仕方ないと言わんばかりの苦笑とともに頭を撫でられる。子供扱いされているようで気にくわなかったが、頭を撫でられるのは嫌いではなかったのでさっさと食べろとだけ言った。
 頷いた慶次がパンにかじりつく。三成は思わず手を止めてその顔を凝視した。
「三成?」
 不審に思った慶次が首を傾げる。慌てて誤魔化して食事に集中することにした。
 迂闊に手を出せば、慶次は警戒してしまうだろう。昼食を共にすることだって、引く手数多の慶次をようやく一人占めすることができたのだ。性急に事を運びたがる三成も、慶次のことに関してはさすがに慎重になる。
 誤魔化されて恋について語る慶次を見ながら、三成はほんのわずか頬を緩ませた。
「いいねぇ、三成はいつもそうやって笑ってなよ。その方がずっといい」
 笑うのはお前にだけだと告げれば、この男はどんな反応をするだろうか。考えると面白くて、緩んだ表情が戻りそうになかった。






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2011.03.22.