「ルーク殿ぉぉぉ……」
 鍵の掛けられたルークの部屋の前で、旦那が情けない声を出す。それを後ろから見守りながら、俺はため息をつき、竜の旦那は舌打ちをした。
 離れにあるルークの部屋の扉には鍵がかかっていて、それが俺たちとルークを隔てている。
 本来ならルークの護衛として常に傍にいるはずの俺たちがこうして締めだされているのには訳がある。
 そもそも、今朝からルークは変だったんだ。
 部屋に入れてくれないし、俺たちに会うと逃げるように走って行っちまうし。どうにかして捕まえて問い詰めれば、いいって言うまでオレに構うなの一点張り。もう夜になってしまって、さすがに主の命令と言えどルークに会えないのは俺たちが辛いってことで、無理やりにルークの部屋に入ろうとしたんだけど。
「入ってくんなっ!」
「Hey、ルーク。理由も言わずに入るなじゃ納得いくわけねぇだろうが。Open this door!」
「い、嫌だ……!」
「ルーク殿、何があったのでござるか! この幸村、及ばずながらお助けいたしましょうぞ!!」
「何にもねぇっつーの!」
 さっきからこんな会話ばっかりだ。
 ルークは頑なに俺たちを拒む。慌ててるのはわかるんだけど、なんで俺たちを、俺を拒絶するかな。
 扉に貼りついて問答を繰り返す旦那たちを見つめているうちに、忍としての冷めた心が目を覚ます。嫌な考えが脳内を占めた。
「俺たちのこといらなくなっちゃった?」
 零れた声音はいやに響いて、叫び続けていたルークも旦那も竜の旦那も弾かれたように黙った。感情が消えていくのを理解しながら、俺は言葉を紡ぐ。
「もう俺のこといらない? だったらはっきり言ってよ。こうやって拒絶されるだけじゃわかんないよ」
 昨日まで特に変わったことなんかなかった。だけどそれは嘘で、もしかしたら俺を疎ましく思っていたのかもしれない。
 どこからやってきたのかもわからない男三人を理由もなしに受け入れるなんて、相当のお人好しかただの道楽だ。
 いつ放り出されたっておかしくないんだ。
「一言言ってくれたらちゃんと出てくからさ」
 調子は明るいが声に温度はない。
 ルークにいらないと言われることが、大将や旦那に落胆されるよりもずっと辛いから。
 旦那と竜の旦那が奇妙な顔で俺を見ている。
 そんなに俺様変な顔してる?
「ねぇ、ルーク……」
「んなわけねぇだろ!!」
 再度言葉を重ねようとしたとき、どうしても出てこようとしなかったルークが飛び出してきた。焦った顔をして俺に抱きつく。
 まさか出てくるとは思わなかったから、俺も旦那たちも咄嗟に反応できなかった。
 ルークは強く俺の服を掴んで離そうとしない。その強さとは裏腹に縋りつかれているようで、無理に離すこともできなかった。
 ほんの少し躊躇ったあと、抱き返して背中を撫でてやる。強張った体が安堵に緩んだ。
「いらねーなんて言ってねーよ! ただ……」
「ただ?」
 それから先は何故か言おうとしない。何かを言おうと息を吸っては言えずに吐き出されていく。
「ルーク殿、一体……」
「ルーク、どうした?」
 ルークは俺の胸に顔を埋め、首を横に振った。普段なら可愛いと思う仕草なんだけど、暗い考えに侵された俺には媚を売ってるようにしか見えなくて。思わず腕に力がこもった。
「わ、笑うなよ?」
 そう言うと、ルークは俺たちを部屋に招き入れた。
 これまで何を言っても拒否されていたのにあっさりと中に入れてくれる。それが奇妙で、竜の旦那も怪訝そうな顔をしていた。
 が、それも部屋の中に入ると一瞬で霧散してしまう。
「これは……」
 誰が言ったのかはわからないが、その言葉を受けてルークがバツの悪そうな顔をした。
「まだ準備終わってねぇんだよ……」
 普段ごちゃごちゃとものが散乱している部屋(それでも俺が片づけてるんだけどね)は綺麗に整頓されて、キラキラした飾りや紙の輪などで精いっぱい飾り付けされていた。ベッドを端に寄せ、部屋の真ん中に置かれた机の上には、箸と皿、それからグラスが置かれていて、あとは料理が来るのを待つだけという状態だった。
 何が起こっているのかわからなくて、竜の旦那と顔を見合わせる。真田の旦那は嬉しそうに顔を輝かせてルークに抱きついている。ルークの顔が真っ赤に染まった。
「あー……っと、これ、どういうこと?」
「その、今日はクリスマスっていってさ。ユリアの誕生日? を祝う日なんだって。っつっても、みんな家族でパーティしたり恋人と過ごしたりするもんなんだけど。今年はお前らいるんだし、お前らとパーティしたかったんだよ」
 せっかくだから驚かせたかったんだけど間に合わなかった、とルークは目を逸らす。
 素直に喜んだ竜の旦那がルークを抱き締めに行くのを見送りながら、俺は心が熱くなるのを感じていた。
 反応しない俺を不安に思ったのか、必死で二人から逃げてきたルークがまた俺に抱きつく。
「オレは、お前らをいらねーなんて思ったことねぇよ。オレは、その、お前らのこと大好きなんだからな!」
「……っ」
 てっきり捨てられるんだって思ってた。それでもいいんだって言い聞かせながら、でも本当は怖くて。
 勝手な勘違いしてルークを傷つける言葉を言ったことを、今どうしようもなく後悔してる。
 ルークは俺を捨てたりしないのに。
「あー、もう!」
「さ、佐助!?」
 抱き返せばルークは焦ったような声を出す。そんなルークの耳元で、ごめんと囁いた。
 疑ってごめんね。俺も大好きだよ。
 さらに慌てるルークがおかしくて泣きそうな気持ちで笑った。背中を撫でる手が心地よかった。






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 そんなこんなでくりすますぱーてぃ? っていうのをやることになって。
 それまでさんざん抱きつかれて抱きついてた俺はルークの隣を奪われて、泣く泣く旦那たちがルークと楽しそうにしているのを見ているしかなかった。
 変に勘違いしてたからってあれでルークが出てきたのは間違いないんだし、このくらい許してほしんいだけど、ルーク絡みの旦那はいつも以上に厳しいし竜の旦那なんか言うまでもないしで、どうにもならなかった。
 ま、初めてのぱーてぃってやつは楽しかったんだけどね。






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戦国×深淵でクリスマス……は、結構無理ありましたね。
ていうか、どっちにもクリスマスはない気がする……。
まあ、雰囲気ってことで。
佐助はいつも捨てられるってことを考えてるんじゃないかなーと思って入れてみました。
味方にも猜疑心激しいんじゃないかと。
そんなヘタレな佐助が大好きです。