「暑い!」
 ベッドの上でじたばたと手足を動かして見る。余計に暑くなってすぐにやめた。
 今日は暑い。ものすごく暑い。空は曇ってて太陽は出てないってのに、なんだよこの暑さ。
 政宗に言ったら雨が降る前だからって言われた。雨が降る前には湿度? が高くなって暑くなるものらしい。
「あーつーいー! どうにかしろよ佐助!」
「俺様!? いくら俺様が忍だからってできることとできないことがあるよ!」
 忍は何でもできるって聞いたから言ったのに、佐助の答えはにべもなかった。まあオレだって佐助がどうにかできるとは思ってなかったから、言ってみただけだけどな。
「申し訳ございませぬ、ルーク殿。某、何のお役にも立てず……」
「お前が何かやると熱いから別にいい」
 何気なく言うと、幸村は思いっきりショックを受けたような顔をした。
 オレ何か言ったっけ、と思い返してみる。……結構ひどいこと言ったな。
 だからといってなかったことにできるはずもなく、オレは幸村の顔を見ないように寝返りを打った。謝ったりとか、できないし。
「ルーク様、ちょーっと言いすぎじゃない? 旦那目も当てられなくなってるから」
 佐助の責めるような声にちらりと幸村を見る。幸村は部屋の隅でこの空気以上にジメジメした空気をつくりだしていた。
 うわあ、オレのせいではあるけどうぜぇー……。
「ゆ、ゆきむ――」
「Heyルーク!」
 オレの言葉を遮って部屋のドアを開けたのは、ここにいなかった政宗だった。どこに言ってたんだよ、コイツ。
 政宗を見やると、手には氷を持っている。
「こおりっ!」
 勢いよく身を起こす。
 この暑さをしのぐものの登場にオレは目を輝かせた。氷のたくさん入った器を持つ政宗に抱きつく形で氷に手を伸ばす。
「氷くれよ、氷!」
「Oh...落ち着け」
 氷を持ってない方の手でオレの腰を抱き寄せた政宗は、ふと部屋の隅に目をやって首を傾げた。
「猿、なんで幸村はああなってんだ?」
「あー……あれは、ねぇ」
「オレは悪くねーぞ」
 バツが悪くなって、佐助が答える前に言っておく。言い訳みたいなのは自分でもわかってる。
 それより氷、と器を奪った。氷の欠片を口に入れると、口の中いっぱいに冷たさが広がった。暑さがどこかへ飛んでいく。
「幸村も食えよ!」
 氷を投げてやると幸村はさっきまでのじめじめが嘘のように顔を輝かせて氷を受け取った。口に入れて嬉しそうに顔を綻ばせる。
 よし、機嫌は直ったみたいだな。
「Ha! 単純だな」
「俺様もそう思う」
 呆れたような政宗にも、疲れたような佐助にも、氷を渡してやった。






+end+






+++++



暑かったんです。
暑いというか、じめじめじめじめ。
上陸もしてないのに、台風の影響は大きいですね。






2010.09.08.