触れたい、と思ったのと、実際に触れてしまったのは同時で。きょとんと目を丸くするルークちゃんの、朱から金に変わる朝焼けの髪が指の間をさらさらと流れていった。
「……佐助?」
 縁側に座って旦那と前田の風来坊の稽古の様子を眺めていたルークちゃんは、不思議そうな顔をして振り向いた。せっかく触れた髪を離すのが惜しくて、俺はそのまま隣に座った。
 ホントは忍が許可もなく座りこんじゃ駄目なんだけど、今日はまあいいってことで。
 ルークちゃんは怪訝そうな顔を崩さなかったけど、嫌だとは言わなかった。それをいいことに柔らかな髪を堪能する。うん、相変わらず綺麗だ。
「何だよ」
「んー、深い意味はないんだけどね」
 綺麗だから、触りたくなっちゃって。
 そう言えば、ルークちゃんはさっと頬に朱を走らせた。顔が髪と同じ色に染まる。そんなとこも可愛いなあって思ってみたり。
「ば、な、何言ってんだよ!」
「うわ、ちょ、ルークちゃんそれ痛い!」
「お前が変なこと言うからだろ!」
 ルークちゃんは髪を取り戻して、ばしばしと俺の腕を叩く。
 戦場には出ないとはいえ、この子の剣の腕はそれなりに強い。今の師匠(?)は前田の旦那らしいし。剣を握るわけだから力も強くて、力いっぱい叩くものだから腕が痛い。
 黙って叩かれるのも何だし、影になって消えて、後ろからルークちゃんを抱きこむことにした。腰に腕を回して、朝焼けに顔を埋める。ひゃう、なんて可愛い悲鳴と小さな抵抗はこの際無視だ。
「バカ佐助、離せってば」
「やーだ。ルークちゃんの髪、綺麗で柔らかいんだもん。少しくらい触らせてよ」
 恋敵二人がいないうちに、ルークちゃんの髪を堪能する。髪だけじゃなくて、体も。なんかこういう言い方すると卑猥だけど、抱き心地の方ね。
 筋肉がついているはずなんだけど、抱き心地がいいんだよねー。
「可愛こぶったって駄目だからなっ。……綺麗とか、そんなわけないだろ」
「綺麗でしょ」
 どことなく落ち込んだような声音を聞かなかったことにして、俺は片手で耳元に流れる髪を掬った。指に絡ませて飽きることなく弄る。
「朝焼けの空の色と同じ。ルークちゃんだって見たことあるでしょ? すっごく綺麗」
 日が昇る前の朝焼け。朱色が段々と色を変え、空を照らしていく。見てみるとわかるけど、本当に綺麗なんだ。
「……父上の髪はもっと紅いんだ」
「何?」
 小さく呟かれた言葉。
 意味がわからなかったから聞き返したけど、返事は返ってこなかった。
「別に! オレの髪が綺麗なら、佐助のだって綺麗だろ」
「えぇー。俺様ぁ?」
 何言いだすの、この子。
「オレのが朝焼けなら、佐助は夕焼け色だろ。あったかい色してる」
 どくん、と一際高く跳ねた心の臓。聞こえてないか心配になる。
 こんな情けないとこ、見せらんないよ。
 頭を抱えて息を吐く。呆れられたととったのか、ルークちゃんが怯えたように震えた。
 理由は知らないけど、ルークちゃんは呆れられたり馬鹿にされたりするのが嫌いらしい。表面は怒っているように見えるけど、実際は怯えていることが多い。聞いたらきっと強がって何も教えてくれないから、聞いたことはないけど。
 違和感のある態度には触れず、軽く額を叩いてやった。
「お馬鹿さん。俺様忍よ? 忍がそんな綺麗なわけないでしょーが」
 綺麗なのもあったかいのも、俺じゃなくてルークちゃんの方だよ。
「佐助はあったかいよ。オレが言うんだからそうなんだよ」
 ホント、この子はさ、人を救うようなことを言うよね。
 言い切られてしまったらもう反論もできない。
 仕方がないから、見上げてくる大きな瞳を上から覗き込んで、唇を奪った。途端に耳まで真っ赤にするルークちゃん。可愛くてもう一回口づける。
「ルークちゃんが嬉しいこと言ってくれるから、つい奪っちゃった」
「ば、バカーっ!!」
 ルークちゃんの叫び声が聞こえた恋敵たちがやってきて危うくボロボロになるところだったけど、ま、終わりよければすべてよしってことで。ルークちゃんには思いがけないことを言ってもらえたし、接吻はしちゃったし、ね。
  あ、でも、減給はやめてよ、旦那。






+end+






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ルークの髪は綺麗で、でもルークからしたら佐助の髪の方が綺麗なんだよーっていうことが書きたかった話、なのですが。
佐助視点で結構心情重視(というか語り口調)で書いたのでぐだぐだしました(汗)
長髪ルークは人の心を救う言葉を平気で言えちゃうんだと思います。
言い換えれば、天然タラシ←






2010.08.25.