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ルークとはぐれた、ということに気付いたのは世間の情勢を聞き終え親切な旅人に別れを告げた後だった。 虎のおっさんのところが穏やかな雰囲気だったから当分戦はないだろうと踏んではいたけど、それでも念のため、と旅人に声をかけた。 謙信のところに行くと言ってからのルークはなんだかぼんやりしてて、俺の話も聞いてないみたいだった。だからそっとしといてやろうと思ったのも理由の一つだった。 けど、それは間違いだったらしい。辺りを見回してもルークはいない。 いつの間にか夢吉も一緒にいなくなってるし……。 通りかかる人たちに聞いて回って、ようやくルークを見つけた頃、ルークは独眼竜と一緒にいた。独眼竜の腕に抱きこまれるようにして馬に乗っている。 馬の上では怖くても暴れるなと言っておいたからか暴れてはいないものの、何か騒いでるみたいだ。彼らの近くでは竜の右目が二人を宥めている。 どうして、だろう。 どろりとした感情が溢れてくる。ルークと独眼竜が一緒にいることが気に食わない。 それなりにあった距離を駆け抜けてルークの腕を掴んだ。独眼竜と竜の右目が呆然としている間に、ルークを奪い取る。横抱きにして奥州の竜と距離を取った。 相手が俺だとわかったルークは首に腕を回してしがみついてくる。 「どこ行ってたんだよバーカ」 勝手に先行っちゃったのはルークの方なんだけど。 そう思うけど言わない。人を責める振りして声は震えてるし、しがみつく腕はこっちの首が痛くなるくらい力が入ってる。よっぽど心細かったらしい。 ついつい苦笑が浮かんだ。 「悪い悪い。ちょっと話聞くのに夢中になっててさ」 離れようとしないルークを宥めるように夢吉が朱色の髪を撫でる。 夢吉、お前ルークと一緒にいたのか。 感動の(?)再会に水を差したのはこれまですっかり放置状態だった双竜で。というより、独眼 竜一人だったけど。 「風来坊、そいつを置いていけ」 今にも刀を抜きそうだ。隣の常識人が深いため息をつく。 苦労してんなぁ、まったく。 しがみつくルークを下ろして庇うように前に立つ。 独眼竜が何を言おうが、はいそうですかってルークを渡せるもんか。ルークは、俺の、 「ルークは俺のhoneyだ。だから連れて帰る」 「そりゃできない相談だな」 イライラする。 前に会ったときは俺の方が独眼竜をからかってみたりしたのに、今は俺の方に余裕がない。 ルークを手放したくない。 じりじりと迫ってくる独眼竜。 俺も超刀に手をかけたそのとき。 「お二人とも落ち着いてください。彼も怖がっているでしょう」 常識人の声ではっとする。 振り返るとルークは俺の邪魔にならないようにと少しだけ離れて、でも手だけはしっかりと裾を掴んでいる。不安そうな翡翠は俺から逸らされることはない。 「っ! 悪い、ルーク!」 「すまねぇhoney」 今にも泣きそう(言ったら怒るだろうけど)なルークに俺は大慌て。 独眼竜も馬を下りて駆け寄ってくる。あんまり慌ててたのかいつもの伊達男っぷりがどこかに飛んでってる。 もう一つため息をついた竜の右目が妥協案を出した。 「慶次殿、どちらに向かわれるかは存じませんが、今回は奥州に来ていただけませんか? 政宗様はこの小十郎がとどめますので」 「おい小十郎!」 「政宗様は黙っていてください」 こうなったら多分、奥州に行くまで首を縦には振らないだろう。 謙信のとこは後でもいいか。どうせ奥州にも行くつもりではあったし。あとはルークが行きたいかどうかだけど。 「それで構いませんか?」 竜の右目が俺、というよりルークに向かって聞く。ルークは俺の着物の裾を強く握りしめたまま、竜の右目を見据えた。彼の言葉に嘘がないか探っているようだ。 「政宗様は俺が抑えますので」 独眼竜が不機嫌そうに鼻を鳴らす。慣れたもので竜の右目は気にもしない。 「ホントだな?」 竜の右目が頷くと、ルークは息をついた。手を離して隣に並ぶ。 「オレは別にいい。慶次は? 友達んとこ行くんだろ?」 「一人で行っちまえ」 独眼竜の言葉は無視。 なんでそんなに喧嘩腰なんだよ。短気だなあ。 「いいよ。これはルークにいろんなとこを紹介する旅なんだしさ。あとで一緒に行こうな」 いつものようにくしゃりと頭を撫でてやる。ルークはほっとしたように笑った。 いろいろ不安にさせちまったみたいだな。 守ってやるって決めたのに。 「じゃ、行くか」 竜の右目が客の来訪を告げるため先に走っていくのを見送って、俺たちも歩き出した。独眼竜が馬に乗れって言ってくるけど、歩くと言い張ってルークの手をとった。 「慶次、どうかしたのか?」 「何でもねぇよ」 安心させるために笑ったけど、うまく笑えてるかわからなかった。 胸の奥で、嫌な感情が渦巻いていたから。 +++++ 慶次ぐるぐる。 まだこれでも無自覚なんです。 ねねのことを織り交ぜていきたいなぁと。 一目惚れした政宗に引っかき回す役目を押し付けたいと思います。 次 |