しばらく幸村と佐助の屋敷(正確には甲斐の虎、武田信玄の屋敷なんだって。武田信玄はすごくでかくてカッコいいおっさんだった)に世話んなって、そろそろ次のところに旅に出るってことでオレと慶次は屋敷を後にした。幸村の暑苦しい見送りと佐助手作りの土産をもらって。
 今度は慶次の友達の上杉謙信って奴のところに向かうらしい。友達っていえばガイどうしてるかな。
 ここも十分楽しいけど、師匠やガイに会えないのはちょっと寂しい。どうしたって好きになれない屋敷の中で、師匠とガイだけは特別だった。
 思いだすとなんだか苦しい。
 そうやって考え事ばっかりしてたからだろうか。
 ふと気がつけば隣にいたはずの慶次がいない。はぐれちまったみたいだ。
 知らない土地で迷子(迷子って認めたくねーけど)になってしまって、内心ものすごく慌ててる。辺りを見回して慶次を探すけど通ってるのは旅人だけで見慣れた黄色い着物は見つからない。
「け、慶次? どこだよ!」
 応えは、ない。
 なんだかすごく怖くなった。
 もう一度呼ぼうと息を吸い込んだとき、肩で何かの鳴き声がした。驚いて肩を見やると夢吉が肩に座っていた。息を呑んだオレの頬にぺたぺたと触れてくる。
 なんだよ、夢吉かよ。
 びっくりさせんなよな。
 一人じゃないと知って安心したオレは夢吉に慶次の行方を聞いてみた。が、夢吉も知らないみたいで困ったように首を傾げられた。
「お前も知らねぇか。仕方ねぇ。探そうぜ」
「キキッ」
 夢吉がいる分、少しだけ気分が軽い。
 そりゃ慶次がいて夢吉がいるのが一番いいけどさ。
「hey! 何者だ、kitty? こんなところで何してる?」
 歩き出したオレたちの隣を馬が駆け抜ける。
 オレの行く手を遮るように止まった馬の上で、青い甲冑を身につけた男が問い詰めてきた。右目を眼帯で覆っていてちょっとカッコいい。けど、オレを見る目は射るように鋭かった。
「オレはルーク・フォン・ファブレ。慶次と一緒に旅してんだ。今ははぐれちまったけど……」
「慶次? 前田んとこの風来坊のことか?」
 そういえば佐助がそんなふうに呼んでたっけ。
 頷くとじろじろと眺めまわされる。
 気分悪りぃなぁ。夢吉もオレの服の中に隠れちまったし。
「まあいい。お前、俺と来い」
「はぁ!?」
 抵抗する間もなく腕を引っ張られて眼帯男と向かい合うようにして馬に乗せられる。前に慶次に馬の上で暴れちゃいけないって聞いてたから、どうすることもできなかった。
 落ちないように眼帯男の体にしがみつく。
 やっぱり馬って怖ぇー。
「政宗様!」
 誰かの呼び声がする。それと、馬の足音。
 眼帯男が舌打ちして嫌そうな顔をした。
 政宗様ってこいつのことか?
 眼帯男と同じように馬に乗って表れたその男は、顔に傷のある怖い奴だった。
 オレを見て睨んだ気がして無意識に眼帯男に抱きついた。そしたら腰に回された腕の力がが強くなる。やめろっつーの。
「政宗様、いきなり走り出されては困ります。勝ち戦の帰りとはいえどこに敵が隠れているのかわからないのですよ」
「noisey! 何もなかったからいいじゃねーか」
「何かあってからは困るんですよ! そもそも、その者はどなたですか。お戯れもほどほどにしていただきたい」
「戯れじゃねぇよ。小十郎、コイツは連れて帰る」
「政宗様、その者が何者かもわからないうちからそのようなことを言わないでください」
 疲れたように額を当てて、ため息をひとつ。顔には似合わねーけどすげー様になってる。
 ちょっとだけ佐助を思い出した。
「出自はどうだっていいんだよ。どうせforeignの奴だからな。こんななりで隠密も何もねぇ。コイツは俺のwifeにする」
「わいふ……?」
「妻ってことだ」
「「はぁ!?」」
 オレと傷の男の声が重なる。
 眼帯男はオレたちの反応を面白そうに笑うといきなり馬の腹を蹴った。馬がいなないて走り出す。
 ちょ、待て……っ!
 眼帯男と向かい合ってるから後ろ向きに走ってるようなもんだし、馬は速いし。心臓がバクバクいってる。
 けど、オレの心はたった一つのことで占められていた。
 これだけは言わなきゃ気がすまねぇっつーの!
 オレは思い切り息を吸い込んで、もはや定番となりつつあるセリフを叫んだ。
「オレは男だっつーの!!」
 途端、馬が急に止まった。






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政宗の口調がわかりません。
どのタイミングで英語を挟んでるんだ……?