城下の街まで行くのに、馬は使わず歩いていくことになった。
 ルーク殿は馬が怖いのだそうだ。政宗殿のおかげで虎馬というものになってしまったらしい。政宗殿も余計なことをする。
 しかし、共に歩けることは嬉しかった。共にいる時間が長くなる気がして。
 先程佐助の手を思い切り振りはらった手を、今度は驚かせないように注意しながら握る。びくつかれてしまったものの、振り払われることはなかった。
 小さく息をついて強く握りしめる。
 振り払われない。ただそれだけのことで心が高揚する。
 満面の笑みを浮かべると、ルーク殿も笑ってくれた。
「お前、浮かれ過ぎなんじゃねーの」
 ぎこちなさが残るものの、笑いを含んだ呆れ声で、ルーク殿は言う。俺も口元が緩んでいるのはわかっていたので少し目を逸らした。
「仕方ないでござろう。ルーク殿と出かけるのは特別嬉しいことでござる故」
「そ、そういうこと普通の顔して言うなっての!」
 そういうこと? と訊き返そうとした途端、ようやく追いついた佐助とばっちり目があった。俺を見る瞳にはからかいの色が見て取れる。
「何々、旦那。ルークちゃんに何言ったの?」
「ルーク、顔が赤いが何かあったのか? 真田に何かされたか?」
「某は何もしておらぬ!」
 かすが殿までそんなことを言う。なんだか責められているような気分になってきた。
  佐助はニヤニヤしているし、かすが殿は真剣にルーク殿を心配しているし。俺は何もしていない、と思う。
 だが、嬉しいような恥ずかしいような表情を浮かべるルーク殿に、やはり何かしてしまったような気がしてならなかった。






+++++






2010.12.01.