「入るぞ」
 一声かけて部屋に入ると、彼らは部屋の隅で円になるように座っていた。佐助の主がべったりと朱色の子供に抱きついている。佐助も主を止めることなく一緒になって座っていて、また怒りが湧いてきた。
 だから先ほどご報告に向かったとき、謙信様は笑っていらしたのだ。
 これがわかっていたから。
「何をしているのだ佐助!」
「えぇ〜俺様ぁ?」
「お前がちゃんと主を見ていないのが悪い!」
 酒宴の重要な人物だというのに勝手に抜け出されて、今酒宴は一時的に止まってしまっている。どちらにしろ前田の風来坊と子供は呼ぶつもりだったのだから、大人しく待っていればいいものを。
 それもこれも佐助が猪突猛進な主を見張っていなかったから!
「旦那が猪突猛進ってのは認めるけどさ、俺まで巻き込まないでくれるー?」
「うるさい!」
「まあまあ、二人とも落ち着きなよ」
 険悪(といっても私が一方的にだ)な雰囲気に、前田の風来坊が間に入ってくる。怒りに任せて風来坊を怒鳴りつけると、本人でなく子供の方が怯えた。続くはずだった言葉も呑みこまざるを得ない。
「す、すまない」
「かすが、ルークちゃん怯えさせないでよ」
「うるさい。お前は黙っていろっ」
「ちょ、かすが態度違いすぎない!?」
 佐助を押しのけ、目を見てくれない子供の前にしゃがみこむ。子供は顔を赤くして、顔ごと私から目を逸らす。ほんの少し傷つきながら、手を差しだした。
「紹介が遅れたな。私はかすが。謙信様に仕える忍だ」
「お、オレはルーク、だ」
 よろしく、と彼の手が私の手を握る。小さいけれど確かにわかる剣だこに私が驚いているうちに、ルークと名乗った子供がちらりと私を見た。目が合うと、すぐに逸らされてしまったけれど。
「ルーク殿、どうかなされたか?」
「何でもねーよ」
 動揺混じりの声音は、どう聞いても何でもないとは思えず。佐助の主と風来坊が同時に彼の顔を覗き込む。私の後ろで倒れていたはずの佐助が、あ、と声をあげた。私たちの視線が一斉に佐助を向く。
「もしかしてルークちゃん、かすがの装束に照れてるんじゃない?」
「な、ち、ちが……っ」
「あー、確かに目のやり場に困るよねぇ」
「破廉恥であるぞ、慶次殿!」
 ルークは違うと言い募るが、それではどう見ても肯定しているのと同じだ。風来坊が納得したように頷き、佐助の主が顔を真っ赤に染めた。
 そんなに恥ずかしいか……? 謙信様は美しいと言ってくださるのだけど。
困っていると、ルークがやっぱり顔を赤くしながら、それでもしっかりを私を見つめてくる。
「あ、あの、だから、その……別にお前が嫌いってわけじゃないんだからなっ!」
 その言葉に、仕草に、胸の奥がきゅう、と切なくなって。可愛さにため気を漏らした。
 佐助が笑ったので苦無を投げておいた。






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かすがちゃんの服は絶対目のやり場に困ると思います。
私でもあれ見てて恥ずかしいよ!
ルークは純情だし、絶対真正面から見れませんって。
幸村はなんで平気なんだろ?






2010.02.01.