酒を飲んでいたはずの真田の旦那が突然手を止めた。静まり返った離れの方を見て、無言で立ち上がる。
「ルーク殿ぉぉぉっ!」
「ちょ、旦那!?」
 俺の制止も聞きやしない。
 ルークちゃんが越後にいないのはかすがに聞いたから知ってるはずなんだけど。
 とはいえ主を放っておけるはずもなく、ため息をひとつついて追いかける。そうして追い付いた離れには、旦那の言う通り本当にルークちゃんがいた。旦那に抱き締められ、前田の旦那に頭を撫でられて、嬉しそうに笑っている。
 あ、どうしよう。今柄にもなく呆然としてる。
 忍にはあるまじきことなのにさ。
「そのような気が致しました故!」
 旦那の叫び声で我に返る。
 音もなくルークちゃんの背後に立って、腰に手を回して抱き寄せた。体に伝わる温度にルークちゃんが夢や幻じゃないんだって理解した。
「そうそう。旦那ってばいきなり走り出すんだもん。俺様びっくりしちゃった」
「佐助っ!」
 俺以上に慌てるルークちゃんに少し落ち着いて、より強く抱きしめる。どことなく甘い香りが鼻腔をくすぐった。
「ま、ルークちゃんに会えたからよかったけど」
 耳元で低く囁いてやれば、ルークちゃんは耳を真っ赤にさせた。
 可愛いなあ、とご満悦な俺に突き刺さる、二つの視線。旦那と前田の旦那だ。
 ってことは、前田の旦那も自覚したってわけか。
「は、破廉恥でござるぞ佐助ぇっっ!」
「はいはい、わかったから叫ばないの」
 不服そうな前田の旦那にルークちゃんを預けて、俺は両手を上げて降参した。
 顔を真っ赤にした旦那の目に浮かぶのは嫉妬。それは俺にも、ルークちゃんの肩に手を置く前田の旦那にも向けられている。
 そんな微妙な空気を理解できない朱色の子供は、不思議そうに首を傾げた。
「そういや、佐助も幸村も何でここにいるんだ? ここって上杉謙信ってやつの屋敷なんだろ?」
 四人で円になるように座り、情報交換をする。旦那と前田の旦那がルークちゃんの隣に座り、俺様はルークちゃんと向き合って座っている。
 まったく、旦那は嬉しそうな顔しちゃって……。
「うむ。今日は武田と上杉の戦は休戦。お館様と上杉殿が酒を酌み交わしているのでございまする」
「かすがちゃんが言ってた大事な客ってアンタたちのことだったのか」
「まーね。かすがにとっちゃ悔しいもんでしかないんだろうけど。旦那たちこそなんで今頃こんなとこに? 甲斐を出た後すぐに越後に向かうって言ってなかった?」
「ああ、それは……」
 前田の旦那が困ったように視線を逸らして頭を掻く。もう一人事情を知っているはずのルークちゃんは頬を朱に染めた。
「政宗が悪いんだよ!」
「政宗殿が!? それは一体……」
 聞き捨てならない名前に旦那が聞き返したとき。
「入るぞ」
 何ともすばらしい間の悪さでかすがが入ってきた。






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幸村は犬属性だと思います。
でも黒幸村も好きvV
佐助はそんな幸村に振り回されつつルークにべたべたしてたらいいよ。
気を抜くと慶次が空気になりそうなのがヤバいです。