ゆっくりと、世界を朱色に染めながら太陽が沈んでいく。暖かなその色に彼を連想して、俺は口元を緩めた。傍らに座る旦那もまた、その景色を見て表情を和らげる。
 夕日の色は彼の人を思い出させる。強がりで意地っ張りで、でも寂しがり屋な朱色の子供を。
「ルーク殿は」
 思わずといったふうに、旦那が口を開いた。
「ルーク殿は今頃、何をしておられるだろうか」
 考えてることはどうやら一緒らしくて。俺はますます笑みを深めて、柱に凭れたまま腕を組み直した。
「さあ。前田の旦那といろんなとこ旅してんじゃないのー?」
 甲斐を出るとき、次は越後に行くって言ってたっけ。越後と言えば軍神。かすがとも会ってるかな。案外仲良くなってたりして。
 饒舌な俺に対して、旦那はそれっきり口を噤んで遠くを見つめている。
 いつもなら過剰なほどの反応がなくて声をかけてしまった。すると旦那は困惑した表情で俺を見上げた。
「某はどうしてしまったのでござろうか。何をするにもルーク殿のことが頭から離れぬ。ルーク殿に会いたくて仕方がないのでござる」
 あくまで無自覚な旦那に、俺はつい声を上げて笑ってしまった。
 本当純情っていうか、鈍感っていうか。
「何を笑っておるか、佐助! 某は真剣に悩んでいるのだぞ!」
「ごめんごめん。だって旦那、わかりやすすぎ」
「何がわかりやすいと申すか!」
 だってそれは、誰がどう聞いても。
「恋、でしょ?」
「こ、い……?」
 余程予想外だったのか、旦那は破廉恥と叫ぶのも忘れてしまっている。うるさくなくていいなあと思いながら、よく理解できていない旦那に理解を促した。
「ルークちゃんのことが頭から離れなくて、あの子のことを考えると心の臓がうるさくて、あの子を思い出したらちょっとしたことでも嬉しくなっちゃう」
「何故わかる!?」
「だから、そういうのを恋っていうの」
 どうしてわかったか、なんてそりゃあ、俺様だってルークちゃんに恋してるから。家族や友に向ける感情じゃないって自覚してるからだよ。
 説明を聞いた旦那はこれ以上ないくらい顔を赤くして肩を震わせた。
「破廉恥なぁぁぁッ! お館様ぁぁっ、この幸村を叱ってくだされぇぇぇぇぇっ!!」
 大きく叫んで走っていってしまう。わかってたことだけどやっぱりうるさい。
 でもまあ、これで自覚はした、かな。
 次に会うときが楽しみだと呟いて、俺は闇に消えた。






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甲斐の国での閑話な感じで。
でも幸村はまだ完全に自覚したわけじゃないと思います(ぇ
恋とか破廉恥な! って言ってわたわたしてたら可愛いです。
無自覚に嫉妬とかしてたら素敵。
幸村はルークにべたべたしてたらいいですvV