ごろりと畳に横になって、暗い部屋の中から明るい外の景色を見る。見てはいるけど、それは認識を伴って脳に入って来てはくれない。
 何故なら、俺の頭の中はたった一つのことで占められているから。
 独眼竜のところで宿を借りることが決まったその日に、独眼竜から言われたこと、それが俺の心をかき乱して、ルークに自然な態度で接することができなくなってしまった。どこかぎこちなくて避けてしまう。
 ルークのことだから俺が避けてることくらいとっくに気づいているだろう。
 わかってる。
 こんなんじゃ守ってやれねぇ。
 守ってやりてぇって思った。右も左もわからない場所で不安に怯える鬼を、できる限りの力で守ってやりてぇって。
 でもそれは家族を守る感覚に似ていた。利やまつ姉ちゃんと同じ。
 同じだった、はずなのに。
 アイツに触れるな、と思ったことがある。
 俺だけに気を許してくれればいいのに、と考えたことがある。
 これは家族に向ける感情じゃない。彼女を忘れたことは一度だってないにもかかわらず。
 俺は彼女に恋をしている。彼女はもう死んでしまったけれど、俺は変わらず彼女に恋をし続けるだろう。
 だけど、ルークに向ける感情もまた、恋に似ている。
 もうわからない。
 自分のことなのに。
 寝返りを打ち視線を動かすと、ルークと独眼竜が並んで座っているのが目に入った。竜の右目にやってもらったのが気に入ったらしく、今日もルークは髪を高く一つに結っている。白を基調にした着物は独眼竜の好みで作らせたっていってたっけ。
 独眼竜が何かを言い、ルークが戸惑ったように首を振った。この距離じゃ何を言っているのか聞き取れない。そのまま見ていると、俯いたルークに独眼竜が触れて、そしてルークは逃げだした。
 ほんの一瞬だけだけど、泣いているように見えた。
 胸の奥が痛む。
 泣き顔なんか見たくなかった。
 笑っていてほしい。
 そう思った途端、胸の中ですとんと何かが音を立てた。あるべき場所にあるべきものがはまる。
 ああそうか。
 俺はただ、目を背けていたいだけだったんだ。最初から答えはそこにあったのに。
 ルークを追いかけるため、勢いをつけて起き上がる。走りだそうと庭に下りると、独眼竜が立ちふさがった。
「何だい? ルーク泣いてたよな。追いかけないと」
「answerは出たか?」
「今は関係ないだろ?」
「答えろ。でなきゃ、お前はhoneyを傷つけるだけだ」
 いきり立つ独眼竜にため息をついて、俺はついさっき出たばかりの答えを口にする。
 気づいてしまえば簡単なそれ。
「好きだよ、ちゃんと」
 彼女は今でも大切で、その恋を消してしまうことはできないけど。
「俺はルークに恋してる」
 守りたい。
 笑顔にしてやりたい。
 俺の、隣で。
 それを聞いた独眼竜は満足そうに息を吐き、ならいいと零した。
「風来坊、追いかけるぞ」
「アンタが止めたんだろ……」
 一緒に走り出しながら事の経緯を聞き出して、俺はまた困ることになった。ルークが何に怯えているのか、見当もつかないからだ。






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ちゃんと答えを出した慶次。
もうちょっと丁寧に書きたいと思うのですが、難しいです。
とにかく、ねねは忘れられない特別な人だけど、ねねとは違った特別の形で、慶次はルークに恋をしているのです。
恋恋言いすぎて私が恥ずかしい……。