奥州にしばらく留まることが決まって、政宗にセクハラされたり小十郎に畑仕事を教えてもらったりして、結構楽しい日々を送ってたオレだけど、一つ気になることがあった。
 それは、慶次のこと。
 奥州に最初に来た日、オレと小十郎が畑仕事をしていたとき、慶次と政宗は何か話をしたらしい。それから慶次は考え込むことが多くなって、オレと話をしてくれなくなってしまった。何言ったのか政宗に聞いてみたけど政宗は答えてくれないし、直接聞こうとしても慶次には逃げられる。
 寂しいなんて絶対思ってないけど、そんな避けられたら気になるっつーの。
 小十郎の畑仕事を手伝いながら、頭に浮かぶのはそんなことばっかりだ。全然手が動かなくて小十郎に休むよう言われてしまった。
 仕方なく縁側に腰を下ろすと、政宗が隣に座る。
「何だよ」
「少しでもhoneyの傍にいてぇってのは悪りぃことか?」
「別に、悪かねーけど」
 政宗はオレのことをhoneyって呼ぶ。南蛮というところでは好きな女のことをそう呼ぶらしい。
 オレは女じゃねぇって言ったら好きな奴だからいいんだって返された。わけわかんねぇ。
 そんなことより慶次のことだ。
 慶次、何悩んでんだろ。オレには聞かれたくないこと、なんだよな。オレから逃げてんだもんな。
 膝を抱えて地面に視線を落とす。慶次とおそろいの結んだ髪が肩口から零れて前に落ちてきた。
 よくわかんねーけど、心の奥がぎゅってなる。
「ルーク」
 政宗がオレの名前を呼んだ。顔を上げると真剣な瞳とぶつかった。片方だけの瞳は鋭くて、オレの心まで突き刺すみたいだった。
 気がつけば政宗との距離がすごく近い。
「ちゃんと言ったことがなかったから言っておくぜ。……俺はお前が好きだ」
 どくん、と心臓が跳ねる音がした。
「一目惚れだったし、お前と同じ時を過ごしてさらに好きだと思った。お前を俺のものにしてぇ。ずっとここにいてほしい」
 政宗は真剣だ。
 毎日聞かされてるときみたく冗談で言うんじゃなくて、どこまでも本気だった。
 多分、町の女が聞いたら躊躇うことなく頷くんだろう。
 だけど。だけど、オレは怖くなってしまって、政宗の目を見返すこともできなかった。ただわけもわからず首を振った。
 だって、だって。
 オレの異変に気付いた政宗が急に心配そうな顔になる。前髪を掻きあげて顔を上げさせられて見れるはずもないのに目を合わせられる。
「何泣きそうな顔してんだ」
 言われたとおり、オレは泣きそうだった。目に涙の幕が張っているのが自分でわかる。政宗の顔がぼやけて見えなくなっていく。
 完全に泣き出してしまう前に、オレは政宗から逃げていた。
 泣き顔見られるなんてまっぴらごめんだ。
 そう思っていながら、口に出す余裕もなくて。誰もいないだろう屋敷の裏手に走っていく。
「……っ!」
 だって、怖かったんだ。
 オレがいたファブレの屋敷は、オレを好きだと言ってくれる人なんか一人もいなくて。
 オレに興味を示さない父上はもちろん、病弱な母上も「オレ」を見てくれることはなかった。メイドや使用人はいつだって「オレ」と「記憶を失う前のルーク」を比べてたし、家庭教師だってそうだ。
 師匠やガイはそんなことなかったけど、時々見せる視線が冷たくて怖かった。
 だけど、こっちに来てから、みんながオレに優しくしてくれる。
 何も知らなくてもちゃんと教えてくれて、呆れたため息をつくこともない。
 純粋な好意っていうのを、惜しまず伝えてくる。
 だから怖くなった。
 好きだけを詰め込んだ思いなんか知らなくて、オレはそれにどうやって応えたらいいのかわからなくて。
 知らないそれに触れるのが怖い。
 屋敷の裏手で膝を抱えて、縮こまるようにしてしゃがみこむ。堪えていたはずの涙は抑えきれなくなってあとからあとから零れてきた。唇を噛みしめて嗚咽だけは零さないようにする。
 怖くて怖くて、慶次のことを考えていたはずなのに全部どこかに飛んでいってしまった。
 怖くて泣いたのなんか、ずっと前にガイに怖い話を聞かされて以来だ。






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今度はルークがぐるぐる。
このルークは髭とかガイの視線に気づいてたんです。
公爵を始めとする屋敷の人たちはもちろんルークを好きだって言ったりしないし、髭やガイの視線は怖いし。
今まで誰からも好かれたことのない自分だから、好きになってもらえるなんて考えもしない。
だから、好きだって言われるのが怖い。
そんなルークを書きたかったりしたわけですが……。
小説中にちゃんと書けって話ですね。
そんな恐怖を吹き飛ばしてあげてほしいです。
がんばれ政宗(ぇ