「なあ」
 と、honeyが唐突に声をかけてきた。
 風来坊は城下に買い物、小十郎は塀たちの訓練に行っていて、俺は政務を片づけるため机に向かっていた。honeyはすることがないからと城に残ったから、この部屋にいるのは俺とhoneyだけだ。
 せっかくの二人きりなのに山のように積み上げられた紙のおかげで手を出せねぇ。どうせ小十郎の差し金なんだろうが。
 俺が答えないでいるとhoneyがもう一度声をかけてくる。振り向けば手が止まることはわかっているため視線は落としたまま返事をする。
「Ah?」
「政宗の目ってどうしたんだ? 怪我でもしたのか?」
「……」
 咄嗟に言葉に詰まる。
 いつか触れられると覚悟はしていた。だが、実際口に出されると平静じゃいられない。右目の傷は俺のtraumaであり、癒えない傷だからだ。
 かといって、事情も知らず純粋な疑問としてそれを口にしたhoneyを責めるほど俺は子供じゃねぇ。理由を話せるほど大人でもねぇけどな。
 何も答えない俺にhoneyが慌てるのが気配でわかった。仕方なしに当たり障りのない答えを吐く。
「怪我、みてぇなもんだ」
「ふぅん」
 honeyは興味なさそうな返事をしたかと思うと俺の隣ににじり寄り手を伸ばす。俺なんかとは違いまめの一つもない綺麗な手は眼帯に触れるか触れないかのところで動きを止めた。
 我知らず強張っていた体から力が抜ける。
「Why? 何のつもりだ?」
「やっぱいい」
 手はそのまま引っ込められ、代わりに右腕にhoneyが寄りかかってくる。思い切り体重がかけられ政務を進められない。
「おいhoney、邪魔すんじゃねぇ」
「うるせー。暇なんだよ。少し構え」
 できる限り俺に近づかないようにしてたくせに、と内心驚いてしまう。気まぐれでもないらしく、honeyはますます体重をかけてくる。
 さわり心地のいい髪が頬を掠めるともう政務をする気もなくなってしまった。
 右目の傷に深く触れてこなかったことに安堵したのかもしれない。
「この俺に命令するたぁいい度胸じゃねーか。その言葉、後悔させてやるぜ」
「へ、変なことはすんなよっ」
「しねぇよ」
 腕を掴み、胡坐をかいた膝の上にhoneyを引っ張り上げる。honeyが慌てた声を出したが、無視してhoneyの手を眼帯に触れさせた。
「おいっ! お前それ嫌なんだろ……!?」
「てめぇだけだ」
 誰にも触れられたくなかった。醜い傷と、愛していたはずの母にかけられた残酷な言葉と態度を思い出すから。
 思い出すたびに苦しんで、死にたいほどに落ち込むんだ。だけど、コイツが俺よりも痛そうな顔をするからほんの少し痛みが薄らぐ。
「てめぇにだけは触れさせてやるよ」
 触れた手からぬくもりが伝わる。腕の中の朱色がひどく愛しい。
 今更癒されるとは思わないが、せめて痛みが和らげばいい。こいつの不器用な優しさで。






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突発的にシリアスチックな(あくまでシリアスチックですよ)政宗とルークが書きたくなりまして。
ルークの不器用な優しさに政宗様が癒されてたらいいな、と思いました。
思っただけです。