突然元就の屋敷に訪れた子供。
 太陽の色を持つその子供は、元親の説得もあり毛利の屋敷で預かることになった。最初は渋っていた元就も、子供が見た目に反して赤子のようであること、その髪の色が朝焼けの色であることを理由に、面倒を見ることを承諾した。
 意外に子供好きだったのか、元親が様子を見に来るたびに隣に座って一緒に甘味を食べている。
 元親も毎日のように元就の屋敷に通い、子供の面倒を見ることにしていた。
 子供がいることが日常になってから数カ月。赤子と同じく喋ることもできなかった子供は、最近ようやく言葉を覚えてきた。元親が顔を見せると、「ちか、ちか」と繰り返すのである。
「鬼よ、その顔気持ちが悪いぞ」
「うるせェよ」
 元親がどうにかこうにか歩いてきた子供を抱きあげ、頭を撫でてやっていると、元就が冷たい視線を投げかけてきた。
 自分でも、どんな表情をしているかは自覚しているつもりだ。これ以上ないほど緩んだ顔をしているに違いない。だが、さすがにイラッときた。
 言い返そうとした途端に、子供に舌っ足らずに名前を呼ばれる。
「ちかぁ、ちかー」
「何だよ、暁」
「ちかぁ」
 何がそんなに嬉しいのか、子供は何度も元親の名前を繰り返す。元親も、子供の名前を呼んでやる。
 子供の名前は、元就がつけた。髪の色から安直に暁、だ。最初は誰を差しているのかわからなかった子供も、それが自分の名前だと理解すると反応することを覚えた。
 暁は城下の子供に比べ発達が遅く、同じ年頃の子どもなら外で走り回っているはずなのに歩くことさえままならない。ようやく覚えてきたとはいえ、見た目と中身の年齢が違いすぎると不安にもなる。
 そんな心配もよそに、暁は元親の頭に手を伸ばしぎゅっと抱きつき嬉しそうに笑った。
 元親と子供が楽しそうにしているのを見て、面白くなさそうな顔をしたのが元就だ。先程以上に冷たく元親を睨む。そして急に立ち上がると、元親の足を蹴りあげた。
「うぉっ! 痛てっ」
「暁、こちらへ来い」
 体勢を崩した元親の方に手を伸ばし、暁を抱き寄せる。元就は暁を胸に抱くと、そのまま部屋を出ていこうとする。
「おい元就! どこ行くんだよ!?」
「ふん。貴様には関係のないこと」
「暁連れてくんだから関係ねぇわけねぇだろうが」
「黙れ姫若子」
「その話はすんな!」
 険悪な雰囲気が漂い始める。ぴり、と空気が張り詰めた。
「なり、ちか、けんか?」
 このまま口喧嘩になりそうな雰囲気を敏感に察したのは、元就の腕の中にいる子供だった。不安そうな顔をして、元就と元親の顔を見比べる。縋るように元就の着物を握り締めた。
「ち、違ぇよ。ケンカじゃねぇって。だからそんな不安そうな顔すんな」
「鬼の言う通りぞ。これは喧嘩などではない。格下の鬼ごとき、喧嘩にもならぬ」
 慌てて暁の頭を撫でたり声をかけたりして、宥めすかす。聞き捨てならない言葉を元就から聞いた気がしたが、今は聞き流しておく。
 それよりも暁の方が重要事項なのだ。
「なり、ちか、けんかしない?」
「しねぇよ」
「しておらぬ」
 二人同時に答えてしまい、顔を見合わせて一瞬睨み合った。ほんの一瞬だったので、暁には気づかれなかったようだ。
 暁はふにゃりと笑い、元就と元親に向かって手を伸ばした。
 可愛い、と思ったのはまたしても二人同時。
 小さな手を握り返してやれば、元就の腕から落ちそうになるほどはしゃいだ。元親はこれ以上ないほど表情を崩し、元就も珍しく優しい顔をする。
 この子供のおかげで、元親はもちろん、元就も少しずつ変わってきている。ほんの少しでも、確かに、穏やかに微笑むことが多くなった。
 自分たちを動かす笑顔を消したくなくて、元親は元就の嫌味にも怒らないでいようと心に決めるのだった。
 それが覆されそうになるのは、ほんの数刻後のことになるのだが。






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子供ルークの名前は暁に決定しましたー。
子供ルーク可愛い。
アニキがいない間は、ちょこちょことナリ様の後をついて回っているに違いありませんvV
実はそれが嬉しいナリ様。
でも、アニキが来るとアニキの元に行っちゃうので、ナリ様は面白くないのです。
それでアニキにケンカを吹っかけてしまうので、暁はいつも不安で泣きそうになっちゃうのです。
そのせいでナリ様とアニキがわたわたしてるとニヨニヨします。
子育て瀬戸内可愛い……vV






2010.07.13.