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オールドラントで師匠を倒し、ローレライを解放して「死んで」、婆娑羅世界ってところにやってきてから、数か月がたった。 ローレライはオレに幸せになれっていってくれたけど、オレは大罪人でレプリカで偽物で、幸せになる権利なんかないんだ。 オレは今、甲斐の国ってところに世話になってる。武田信玄っていうおっさんが治めてる、すごくいいところだ。 オレは山の中に住んでるけど、近くの村の人は優しいし、たまに遊びに来てくれる幸村とか佐助はいい奴だし。大罪人のオレにはもったいないくらい。ここにいられるだけで、もう泣きたくなるくらい幸せなんだ。だから、これ以上望んじゃ駄目なんだ。 それなのに。 +++++ 前に慶次が来てから、一か月が過ぎた。いつもは一週間もしないうちに顔を見せるくせに、なんかあったのかな。 って、違う。いいんだ、これで。 慶次はいい奴だから、オレなんかのとこに来なくなってよかったんだって。 好きだ、なんて言われても、オレには応えられない。オレが誰かに好かれるのも、オレが誰かを好きになるのも、赦されないこと、なんだから。 「いいんだ」 口に出したら、胸の奥がぎゅってなった。 苦しい。 畳の上に座り込んで、ぼんやりと唯一の入り口を眺める。 もしかしたら慶次が来るかも、なんて。何期待してんだろ、オレ。 慶次はこんなとこに来ちゃダメだ。そう思うのに、慶次が来ないことに苦しんでるオレがいる。 「静か、だな」 静かな部屋に鳥の鳴き声だけが響く。慶次がいないとこんなに静かだったんだ。ちょくちょく慶次が来るから忘れてた。 頬に涙が伝ったのと同時に、大きな音を立てて戸が開いた。目を丸くするオレの前に、見慣れた黄色が飛び込んでくる。 「久しぶりだな、ルーク。ちょっと謙信のとこ行ったらまつ姉ちゃんに見つかってさ。加賀に連れ戻されたんだよなー」 ニカッと人懐っこい笑みを浮かべた慶次がそこにいた。慶次は玄関近くに座り込んだオレを見て、不思議そうな顔をした。 「どうしたんだよ。泣きそうな顔してるよ」 慶次が、いる。 胸の奥が切なくなる。 見上げたらくしゃりと頭を撫でてくれて。駄目だってわかってるのに、慶次に手を伸ばした。 逞しい胸に抱きついて、慶次がいるのを確かめる。嗚咽を堪えるオレの背中を、慶次は優しく撫でてくれた。 「ルーク、どうしたんだい? 何か嫌なことでもあった?」 酷いことをして、酷いことを言ってきたのに、慶次は優しい。優しすぎる。 「慶次の、バカ」 「ちょ、バカはないだろ、バカは」 「慶次が悪いんだ。慶次がオレのこと好きだなんていうから……」 オレなんかが人を好きになっちゃダメだったのに。慶次の言葉が、優しさが、オレの心の壁を壊していくんだ。 「慶次がいなきゃ、オレ、何にもできなくなる」 「うん」 ボロボロ泣きながら、慶次を締め付けるように抱きついて、叫んだ。 ずっと心の中に閉じ込めてきたものが、決壊したみたいだ。涙が止まらない。 「慶次がいないとなんか物足りないし、すげー寂しいし、ずっと慶次のことばっかり考えてる。慶次がオレのこと好きになるはずないのに、好きになってほしいって、ずっと一緒にいたいって思う」 ダメなのに。好きになっちゃ、ダメだったのに。 いつの間にか好きになってた。慶次のことが大切になってた。 こんなに苦しくて切ない気持ち、慶次しか知らない。 「じゃあさ、ずっと一緒にいればいいよ」 慶次がオレの体を包み込んで、言い聞かせるように耳元で囁く。 「俺いつも言ってきたよな。ルークのこと好きだって。全部本気だって。ルークが俺と一緒にいたいって思ってくれるんなら、俺と一緒に暮らそう」 慶次の言葉にますます涙が溢れて来て、慶次の胸に顔を押し付けた。声に出せそうになかったから、代わりに何度も頷く。頭の上で慶次が笑う気配がした。 「まずは幸村たちに会いに行こうか。それから独眼竜のとこにも行ってさ、謙信にもかすがちゃんにも会って、いろんなところを旅しようぜ。ルークと旅したら楽しそうだなー」 「……んだよ、それ。一緒に暮らすんじゃないのかよ」 「ルークと一緒に旅して暮らすの!」 しばらく泣き腫らして落ち着いた頃、慶次が奇妙なことを言いだした。少しふてくされたように言うと、拗ねたように返される。 それがちょっとだけ笑えた。そしたら、やっと笑った、と真っ赤になった目元に手を当てられる。目元が熱を持ってるからか、慶次の手が冷たく感じた。 「好きだよ、ルーク」 いつになく真剣な声に、オレも、と小さく呟いた。嬉しそうな慶次の笑顔が眩しかった。 +++++ 一応「信じたい、でも信じられない」の続きです。 慶次がルークに好き好き言い続けたので、ルークも自分の気持ちに素直になりました。 人間不信で諦観入ってて、自分なんかって思ってたルークが自分で何かしたいって思ったんです。 ちなみに、慶次の一緒に暮らそうはプロポーズです(笑) でも旅をする気満々という← でも慶次ってそんな人だと思います。 一緒に旅しよう、みたいな。 何かに縛られないのが慶次だから。 2010.03.04. |