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市中見廻りの途中。見慣れた銀色を見つけた気がして、沖田は目を凝らした。だが、どこか様子が違う。見知った銀色であるはずなのに違和感がある。 それを考えている間に、銀時の方から近づいてきたらしい。こつん、と頭を叩かれて、我に返った。 「沖田くん、そんなところで考え込んで何やってんの」 「旦那」 近づいてこられて、ようやくその違和感の正体に気付いた。 銀色の天然パーマは変わらないのだが、ツインテールなのだ。ついでに言えば、来ている服もいつもの和洋折衷の服ではなく、純粋な和服だ。しかも、女物の。白地に桜の模様が入ったそれは、いつも以上に銀時の愛らしさを引き出している。 「旦那っていうより、姉御ですかねィ」 「沖田くんにまでそう言われるのってイヤなんですけど」 「でも、綺麗ですぜィ」 途端に顔を赤くする銀時。ありがとう、と聞こえた気がするのは、絶対に気のせいではないはずだ。 「ところで、姉御はなんでそんな格好してんですかィ?」 「あ、姉御は通すのね」 そこを何とかしてほしかった、とぼやくのは無視して、首を傾げる。辺りには多くの女がどことなく頬を染めて集まっている。中には男もいるようだ。何かのイベントだろうか。 わけがわからない、といった様子の沖田に、銀時は苦笑してある場所を指差した。 「バレンタイン……?」 「そ。万事屋の依頼でさ。そこのケーキ屋の売り子やってんの」 銀時が指差したのは、小さなケーキ屋だった。小さいながらに人気があるらしく、沖田もそのケーキ屋のことは知っていた。何度か銀時のために買いに行ったこともあるのだ。 なるほど、と沖田は頷く。よくよく見てみれば、新八も神楽も綺麗に着飾って客の対応をしている。 女装の理由はおそらく、その方が女が来やすいからだろう。バレンタインは女性のイベントだ。 「まあ、仕事ならしょうがないですねィ」 「何それ。なんか含みありそうで怖いんですけど」 口元を引きつらせた銀時に、沖田はにこりと笑ってみせる。それだけで察したらしい銀時は顔を青ざめさせる。わかってもらえたようでなによりだ。 仕事でなければ、どうしてやろうかと思ったところだった。 普段でさえ男女問わず人目を引く容姿だというのに、女装をするとさらに彼の綺麗な容姿が際立つのだ。誰かが声をかけないとも限らない。嫉妬深いと自分で認めている沖田は笑顔の裏で怒りを募らせていたのだ。 「旦那が餓死なんてことになったら大変ですしねィ」 だからといって、気にくわないことに変わりはない、のだが。 ムッとしたのがわかったのだろう。銀時から苦笑する気配が伝わってくる。子供だと言われている気がして反論しようと開いた口に、甘いものが押し込まれた。 「旦那……?」 「これで機嫌直してよ、ね?」 口の中が甘い。チョコを入れられたらしい。目を丸くする沖田に、銀時は内緒な、と片目を瞑って見せる。 ほんの少し頬を赤くした沖田は、銀時の手を掴んで引き寄せた。わざと見せつけるような形で、耳元で甘く囁く。 「来月、覚悟しておいてくだせェ」 周りの女たちの黄色い悲鳴が聞こえたが、無視して耳に口づける。勢いよく距離を取った銀時は、真っ赤になった耳を押さえて三倍返しにしろよ、と呟いた。 そのあとで、いちゃつく二人を発見した新八と神楽に殴られたのは言うまでもない。 +end+ +++++ もうバレンタインデーとかいつの話っていうね! でもバレンタイン話です← 2011.02.25. |