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【Trick or Trick?】 「よしっ!」 用意された衣装に着替え、銀時は気合を入れて両手を握りしめた。 鏡に映る銀時は普段と違い洋服を着ている。襟を立てた長いコートを羽織り、コートの下は着慣れないスーツだ。髪もオールバックに撫でつけ、口元には牙をつけた。 いわゆるドラキュラの格好である。 何故銀時がこんな格好をしているのかといえば、今日がハロウィンだからである。 今年のハロウィンは江戸中で仮装大会のようになっていて、江戸に住む人は皆仮装をすることに決まったのだ。ちなみに、言いだしっぺは彼の将軍様らしい。やはり偉い人の考えることはわからない。 とはいえ、せっかく合法的にハロウィンをすることができるのである。人目をはばからずお菓子をせびりに行けるのだから、銀時にとっては万々歳だ。 鏡を見ておかしなところがないか確認した銀時は早速外へと繰り出した。 +++++ かぶき町はいつも以上に変な人でいっぱいだった。そもそも普段から天人と地球人とが入り乱れ妙だというのに、今日は地球人が様々な格好に仮装しているからさらに奇妙だ。 銀時の知り合いたちもめいめいがハロウィンらしい格好をしていた。 神楽は可愛い魔女っ子だったし、新八は包帯でぐるぐる巻きにするだけのミイラ男だ。偶然会った桂はエリザベスと同じ格好だった。相変わらず桂は何かを間違えている。 互いにハロウィンの決まり文句を言って、お菓子を交換した。 今度は誰に会えるだろうかとホクホク顔で町を歩いていると、見慣れた茶色を見つけた。口元に笑みを浮かべ、弾んだ足取りで近づいた。 「おーきたくーん!」 少し背の低い恋人が振り向く。銀時の姿を目にした途端、一瞬目を見開いたあと、幼い顔に満面の笑みを浮かべた。 「銀時さん!」 近づいてくる恋人は茶色い頭に同じ色の獣耳をつけている。他には何も仮装らしいものはしていなくて、沖田が何の格好をしているのかわからなかった。服装も普段の真選組の隊服なのだ。 「トリックオアトリート!」 とりあえず、沖田に向かって手を伸ばす。もらえるものはもらっておかなければ。 けれど、途端に沖田が浮かべた意地悪そうな表情に、銀時はぎくりと体を震わせる。それは沖田がいたずら(沖田いわく)をするときの表情によく似ていた。 一瞬のソレをうまく隠して、沖田は銀時の手を引いた。 表情には気づけても、沖田が何をするかまでは推測できない。ロクな抵抗もできないまま、銀時は沖田の腕の中へと招かれてしまった。腰にはしっかりともう片方の腕が回り、手を引いていた方は頬に当てられている。ずっと外にいたのか、沖田の手はひどく冷たかった。 そんなことに気を取られているうちに、唇にも冷たい感触が触れる。声を漏らす暇もなくあっさりと離れていった。 「な、お前……ッ!」 周りにいるのは仮装した集団ばかりとはいえ、ここは往来だ。好奇に輝いた周囲の目が銀時たちに集まる。 突然のキスにも周囲の視線にも動揺する銀時に、沖田は楽しげに目を細めた。 「今ちょうど甘味切らしてましてねィ、代わりに甘いもんでも、と思いやして」 「お前、ここどこだと思ってんだよ!」 思わず怒鳴りつけるも、沖田は涼しい顔。 銀時は気づいていないが、腰に回された腕は離れていない。それをいいことに、沖田は再度銀時に口付けた。今度は触れるだけのそれではなくしっかりと口を塞がれる。生温かいものが唇を割ったのだと気づいたときには、思い切り口内を犯されていた。荒々しい口付けはまさに獣のようだった。 縦横無尽にうごめく舌に意識を飛ばしかけながら、沖田の頭の上で揺れる獣耳を視界に入れる。 今更ながらにそれが狼であるということに気付いた。沖田の仮装は狼男だったのだ。 狼男に喰われるドラキュラ。なんて情けない。 「ん、くぅ……ッ」 情けない、なんて思う暇もなく深いキスは繰り返されて。銀時の腕が自然と沖田の首に回り、もの珍しい男同士のキスに周囲の目が飽きてきた頃、ようやく解放された。 「……ば、かですかお前は」 「俺ァ獣ですぜィ。これくらい当然でしょうや」 雄を感じさせる艶めいた笑みを浮かべた沖田は、耳元に唇を寄せ低く掠れた声で囁いた。 「悪戯、させてくだせェ」 ぞくり、背筋が震える。咄嗟の言葉を失った銀時は、ここが往来であるということも忘れて沖田に縋りついた。 「……人がいないとこにしてね」 届くか届かないかほどの声は、しっかり沖田に届いたらしい。腰に回された腕が離れ、代わりに強く腕を引っ張られた。強引にどこかへと連れて行かれる。向かう先はきっと茶屋だろう。 抑えきれない劣情を感じて、期待に胸が震えた。 +end+ +++++ Trick or Treat! なんちゃって。 どうしてこうなった、な内容ですが、お気になさらず←無理 公開プレイにするつもりなんてなかったんだ……! 2010.10.30. |