【愛されて、愛して、】






 銀時の誕生パーティと称して、万事屋三人と一匹でどんちゃん騒ぎをした日の夜。
 子供たち二人を寝室に寝かせ、銀時は一人酒を楽しんでいた。定位置の椅子に座り、窓に手をかけてゆっくりを酒を口に運ぶ。窓の外に浮かぶ月が酒の肴だ。
 銀時がこうして起きているのに、特に理由はなかった。
 強いて言うなら、ただの勘である。なんとなくアイツが来そうな気がして。
 今日は銀時の誕生日だということで、旧友たちがそろってプレゼントを持ってきた。
 桂は桂らしくうざったらしい長話を披露して、もらっても素直に喜べない大きな抱き枕をくれた。オッサンに抱き枕ってどうなんだ、と思いつつ枕をひっくり返すと、ちょうど顔に当たる位置に桂の写真がプリントされていた。無言で定春に渡しておいた。
 坂本は珍しく万事屋を壊さなかった。ただ、珍しかったのはそこだけで、相変わらず銀時に抱きついてきたし陸奥に殴り飛ばされていた。
 坂本が押し付けてきたのは、宇宙中で集めたありとあらゆる甘味だった。銀時と神楽はそろって目を輝かせ、新八は苦笑した。なにしろ、量が半端ではなかったのだ。机の上に山積みにしてもまだ乗りきらないほどの量だった。
 旧友たちの祝いの言葉に、くすぐったい気分になったのを覚えている。この歳になって誕生祝いも何もないと照れ隠しに言ってみたりはしたけれど、嬉しいものは嬉しい。
 もちろん、子供たちの想いは言うまでもない。
 ふわふわと胸があたたかくなる心地で、銀時は酒を口に運ぶ。もはや呑むというよりも舐めるという方が正しい。酒を口に運ぶたび、表情が緩むのを抑えられなかった。
 幸せ絶頂な銀時の元に、また一人訪問者が現れた。見知った気配に、銀時はますます表情を緩める。へら、とこれ以上ないほど崩れた表情で出迎えると、訪問者は呆れたようなため息をついた。
「やっほー、高杉」
「なんだそのだらしねぇ表情は」
「だってさ、嬉しいんだもん」
 銀時を家族だと言ってくれる子供たちだとか、昔と変わらず誕生日を祝ってくれる旧友とか。生まれてきたことを祝ってくれるのが、嬉しい。
 彼らが大切なのだと、改めて実感するから。
「そーかよ」
 高杉はわずかに拗ねた表情を見せてそっぽを向いた。子供っぽい仕草にますます笑みが深まる。
 この大きな子供は、銀時が想う対象に自分が入っていないとでも思っているのだろうか。
「馬鹿だねぇ、高杉くんは」
 聞こえないほどの声音で言ったはずが高杉にはしっかり聞こえていたようで、高杉は小さな舌打ちをした。苦虫を噛み潰したような顔で、机の上に箱を放り投げる。
 慌てて一つを受け取るが、次から次へと箱が投げられる。あっという間に事務机は箱でいっぱいになった。
「ちょ、何これ」
「やる」
「はぁ? やるじゃなくてさ」
「やるっつってんだ。ありがたく受け取れ」
 恐る恐る箱を観察すると、香ってくる甘い匂い。中にはケーキが入っていた。定番のショートケーキからモンブラン、タルトなど、ケーキに分類される甘味が勢ぞろいしていた。
 昼間坂本が持ってきたものとはまた種類が違う。
「うわ、高杉、これ高級ケーキ屋のじゃねーの?」
 銀時の記憶が正しければ、このケーキの山は江戸でも一、二を争うケーキ屋のケーキだ。早いうちから並ばなければあっという間になくなってしまうほどの人気だという。
 そんなケーキが山積み。感動に言葉を失った。
「……適当に買ってきただけだ」
 どっかりとソファに座る高杉は未だにそっぽを向いたままだ。だが、髪の隙間から除く耳が真っ赤に染まっていて、照れているのは容易にわかる。
「さんきゅー、高杉」
 蕩けるような笑みを零した銀時は、早速ケーキを取り出した。キッチンからフォークを持ってきて、ケーキを持って高杉の向かいに座った。
 一口掬って食べる。口の中に甘いクリームの味が広がった。
「美味いか?」
「うんっ」
 幸せそうな銀時を見やる高杉の顔はいつもより穏やかで。おめでとうの言葉どころか誕生日の話題さえもないけれど、確かに祝ってくれる心を感じた。
 やっぱり嬉しくて、銀時はだらしない表情になるのを抑えきれなかった。






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銀さぁぁぁぁんっ!
誕生日おめでとォォォォォォォッ!
というわけで、誕生日小説です。
銀さんはですね、たくさんたくさん幸せになるべきだと思うのですよ。
誰よりも何よりも、強くて優しくて弱い人だから。
たくさん愛されるくらいがちょうどいいのです。






2010.10.10.