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【君の知らない攻防と妥協】 真選組副長と真選組一番隊隊長。真選組の幹部であるこの二人は、現在雨宿りのの真っ最中だった。 市中見廻りの途中、いきなり雨が降り出したのだ。このところ夕立が多くて、屯所を出るときにも山崎に傘を持って行くよう言われてはいたのだが、まあいいかと傘を持たなければこの様だ。咄嗟にコンビニの軒下に逃げて、雨がやむのを待っている。 強く地面を叩く雨は避けているはずの軒下にも入ってきて、靴を濡らしていく。靴の中まで濡れる不愉快さに土方は小さく舌打ちをした。 「早くやまねーかな、この雨。靴ん中まで濡れてやがる」 「そのくらいで舌打ちしねェでくだせェや、土方さん。俺ァ雨よりアンタの舌打ちの方が不愉快でさァ」 「うるせぇ」 何故かひどく不愉快そうな沖田に、こっちの方が不愉快だと土方は眉間に皺を寄せる。雨のおかげで煙草が湿気ていて、火をつけてもうまくない。煙草も吸えず沖田に当たられ、土方の堪忍袋の尾はそろそろ切れそうだった。 市中見廻りが終われば土方は夜のみ非番で、呑みに出ようと思っていたというのに足止めを食らっていることも、土方にとっては苛立ちの原因だった。 あからさまに顔に不機嫌です、と書いた警察二人がコンビニの前に居座っていれば、明らかに営業妨害なのだが、コンビニの店長は何も言えないでいた。不機嫌な警察に声をかけて厄介なことに巻き込まれたくないのである。 「あ」 不機嫌オーラをまき散らしながら雨を見やっていた土方の耳に、不意に沖田の声が届く。沖田と言い合いをするのは雨宿りの前半でやめていまい、黙った頃だった。 何かを見つけたような声音に土方が視線の先を追うと、そこには赤い傘を持った銀色の男がいた。 万事屋の主、銀時である。銀時は子供たちも連れず一人で歩いていた。しかも、何故かこちらに向かってきているようである。 「旦那っ」 沖田が呼びかけると、銀時はこちらの存在に気付いたようだ。気のない様子で手を振り土方と沖田の方へとやってくる。 「こんなところでどうしたんですかィ? 旦那が雨の日に出かけるなんて珍しいじゃねェですかィ」 「んー……銀さんの命の源ともいえるイチゴ牛乳が切れちゃってさー。イチゴ牛乳がなきゃ生きてけないから、夕立の中買いに来たってわけ」 「雨やんでからじゃ駄目だったんですかィ?」 「イチゴ牛乳買って来いって新八に言ったら追い出された」 銀時に話しかける沖田は喜色満面で、年相応の無邪気さが前面に出ている。銀時も銀時で懐かれるのはまんざらでもないらしく、どこか嬉しそうに相手をしている。 そんな表情は自分には向けたことがないくせに、と自分の態度を棚に上げて土方は不機嫌を乗せてため息をついた。そんな土方に気付いたのだろう、先程まで柔らかな表情を浮かべていた銀時が途端に眉を顰める。その反応が気に入らなくて、土方はなんだよ、と不機嫌丸出しの声で応戦した。 「別にぃ。多串くんの顔見たから不機嫌になったなんて言ってないし」 「言ってんじゃねぇか!!」 思わず怒鳴ると、怒鳴られた本人ではなく周囲の道行く人が怯えた。ひどーい、と沖田と銀時が声をそろえる。 何度怒鳴ろうと二人に効果があるはずもない。土方は苦虫を何十匹も噛み潰したような顔になった。 「そういやさ、多串くんたちなんでここにいんの?」 土方の怒声をものともせず、自分が売った喧嘩を簡単に放り投げて、銀時はきょとんと首を傾げた。今まで以上に機嫌を損ねた土方は顔を逸らして答えようとはせず、代わりに沖田が答えた。 「雨宿りでさァ。夕立までには帰る予定だったんですがねィ、ついうっかり雨に振られちまってこのザマでィ」 傘を買うこともできたのだが、生憎二人とも持ち合わせがなく(沖田に至っては財布を持ってきていないと言い出した)、買えて一本の傘のみ。一つの傘に男二人という薄ら寒い構図は御免被りたかったので、傘を買わずに雨宿り中というわけだ。 一通り沖田が説明を終えると、訊いた本人は自分が訊いたにもかかわらず、つまらなそうにふぅん、と呟いた。降り続く雨が傘を濡らしていく。ぴちゃん、と水滴が落ちたのと同時に、じゃあさ、と銀時は口を開いた。 「傘入ってく? 一本なら傘買えるんだろ。だったらどっちか入ってけばいいんじゃね?」 あ、そのときはいちご牛乳奢ってね。軽い口調で銀時は続ける。 突然の申し出に目を丸くしたのは土方だけではなかった。まさか銀時がそんなことをいうとは思ってもみなかったのか、沖田も驚きを隠せないでいる。 驚きから真っ先に我に返ったのは沖田だった。飛びつくように銀時の手を握り、興奮を隠さず誘いに乗った。 「じゃあ俺のこと入れてくだせェ! いちご牛乳ならいくらでも奢りまさァ!」 「っ待て!」 土方が大声で呼びとめる。誰が聞いても焦った声だった。 沖田が舌打ちをし、銀時は驚いた顔を土方に向けた。 銀時と犬猿の仲にある土方が呼びとめるとは思ってもみなかったのだろう。ぱちぱちと目を瞬かせる銀時は可愛かった。 と、そうではなく。 「総悟なんか入れてんじゃねぇ」 自分が一緒に入る、とは言えなくて、土方は誤魔化すように唸った。 一緒に入ると言えない自分が情けない。土方としてはこれでも頑張った方だ。普段反発していることも手伝って、土方は自分の想いを素直に伝えることができない。呼びとめただけでも土方には勇気が必要なことだったのだ。 言われた銀時は目を丸くして、首を傾げた。 「もしかして、土方くんも入りたいの?」 「え」 そんな返答が返ってくるとは思えなくて、我知らず沖田と声がハモる。一瞬の睨み合いに火花が散った。 「そうならそうと言ってくれないとさー」 水面下の攻防など気付いていない銀時は、へらりと笑って手を振る。 「同じ方向だから沖田くんと入っていきたいんだろ? そうだよなー。俺がついてったら土方くん怒るもんねぇ」 真選組の幹部二人はそろって肩を落とす。 この男はどこをどうしたらそういう解釈ができるのか。そもそも土方と沖田は一緒に入りたくないから雨宿りをしているというのに、銀時はすっかり忘れている。 というより話を聞いていないのだろう。そこが銀時らしいといえば銀時らしいが。 「いくらなんでもそりゃひどいでさァ」 「だよな」 「で、どうすんの?」 やはりさっぱり人の話を聞いていない銀時は、再度尋ねた。土方と沖田は顔を見合わせる。 「今回だけだぞ」 「そりゃこっちの台詞でさァ」 沖田がが疑問符を浮かべる銀時の手から傘を奪い、土方が銀時の腕を掴んで引き寄せた。真ん中に銀時を置く形で並び、大きいとは言えない傘に三人で入る。両側になった土方と沖田は半分以上傘に入ってはいなかった。 ゆっくりと歩き出す。向かう先は真選組屯所だ。 「え、ちょ、何この状況」 何故三人で一つの傘に入っているのかわからない銀時が尋ねても、土方も沖田も答えない。にこり、と邪気のない笑みを浮かべたのが沖田で、やや赤くなった顔を背けたのが土方だ。 「屯所まで送ってってくださいね」 「風呂入っていって構わねぇからな」 あわよくば泊まらせようと企む二人の心の内も知らず、銀時は男三人で一つの傘を利用するという奇妙な状況のまま、真選組屯所まで二人を送る羽目になったのだった。 +end+ +++++ 途中で話を見失ったのがバレバレですね。 土方さんの中の人と沖田くんの中の人の声真似さんがメルトを歌っていたので、それをもとに書いてみたんですが……失敗失敗☆←じゃねぇよ なんだか最近、話の終わりがわからなくなってきました。 2010.10.01. |