ざあざあと、強くはないが傘が必要な強さで雨が降る。
 俺と沖田くんは一つの傘で雨の中を歩いていた。男2人が相合傘なんて気持ち悪いことこの上ないが、雨のせいで足早になる人たちには特に何も思われていないらしい。
 こうなってしまったのには、深い訳があったりなかったりする。
 ほんの数分前の話だ。






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 今日の講義は一限と五限で、さすがに暇を持て余した俺は、散歩でもしようかと考えもなく校内を歩いていた。途中で急にイチゴ牛乳が飲みたくなって、売店に向かおうとしたのが運の尽き。なけなしの小銭で目的のものを買って売店を出ると、外は土砂降りの雨だった。
「どーすっかな」
 結野アナの天気予報は毎日見てるけど、実のところ結野アナしか見てなくて内容なんか覚えちゃいなかった。もちろん傘を持ってきているはずもない。
 同じように売店から外に出た人たちはみんな傘を持っているようだから、これは通り雨でもなくただの雨なんだろう。
 めんどくさいことになった。
 ポリポリと頭を掻いてみる。雨はやまない。
 決して弱くはない雨。売店と文学部棟の距離は遠くもなく近くもなく、濡れて文学部棟に行くこともできるが、それだとヅラがうるさそうだ。でも、傘を買う金もない。
 売店の前で雨がやむのを待つしかないだろう。こうしてぼんやり過ごすのは嫌いじゃない。それに、時間が差し迫ってるわけじゃないし。
「あれ、銀時さん?」
 イチゴ牛乳片手に雨宿りをしていると、見知った人影が近づいてくる。ひょんなところで知り合って、何を思ったか俺に告白なんかしてきた男、沖田くんだった。
 そこら辺の同年代の男が来ているような、カジュアルな服装にもかかわらず似たような服装の俺なんかよりずっと似合って見えるのは、元がいいからなんだろう。
 カッコいいとか、思ってないから。
 彼が持つグレーの傘から水滴が落ちる。沖田くんは傘を差したまま、俺の前に立った。
 傘いいなあ……。そういやジャンプ読みかけだった。次の授業の講義室に置いてきたんだっけ。
「どうしたんですかィ。雨宿り?」
「まあそんなとこ。イチゴ牛乳買いに来たら雨でさー、銀さんすごい困ってるの」
「へえ。天気予報は見なかったんで? 今日は一日雨の予報ですぜィ」
「……」
 返す言葉もございません。
 黙った俺に、沖田くんは小さく笑みを零して。
「仕方ねェから入れてやりまさァ」
 恩着せがましく、そう言った。






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 そんなわけで、俺と沖田くんは一つの傘で歩いている。
 いくら大きめの傘とはいえ大の男が二人も入るにはさすがに無理があって。互いに肩が濡れていたりするが、早く文学部棟に行けるのだからよしとする。
 むしろ納得いかないのが、手だ。たった一つしかない傘の柄は、俺が右手で持っている。俺のほうが背が高いから俺が持つのは当然だ。
 なのに、俺の右手には手が重なっている、沖田くんの左手が。俺よりほんの少し小さい手が武骨な手を包み込む。
 俺が持つと声をかけると、俺の傘なんで、と返された。
 盗むとでも思ってんのかコノヤロー。でもそう言われてしまうとそれ以上何を言うこともできなくて仕方なく口を噤んだ。互いの体温を感じながら(一方的に)気まずい空気のなか黙々と歩く。
 触れた手が熱い。熱でも出たみたいだ。
 雨のせいか冷たい手とは逆に、俺の体はどんどん火照っていく。さりげなく手を外そうとして見るけど、思いの外力が強く手離れてくれない。
 真っ直ぐ歩いているはずなのに、歩いている気がしない。右手ばかりに意識がいって何も考えられなくなる。
 ドキドキなんかしてない。
 してないったらしてないんだ!
「銀時さん?」
 沖田くんが首を傾げる。無邪気な表情に鼓動がまた早くなった。
 いやいやいや、そんなはずない!
 大きく首を振る。沖田くんが不審そうに眉を寄せた。
「な、んでもないっ!」
「そうですかィ?」
「そうだって。あー、ありがとな。もう文学部棟に着いたし」
 顔を上げるといつの間にか文学部棟で。
 理学部の沖田くんにはここまで来るのは遠回りだっただろう。これから理学部棟に戻らなきゃいけないから。
 傘を抜けて屋根の下に入る。と、思ったら、ぎゅっと右手を掴まれて動けなくなる。
「う、あ、沖田くん……?」
 顔に似合わず強い力で引っ張られて距離が近づく。呆然として動けない俺は、続く彼の行動に反応することもできなかった。
 触れて、離れていく唇。
 右手にあった熱は一気に顔まで伝染して。
「報酬はこれで」
 ペロリ、と唇を舐めるその行為が、いやらしいと思った。
 遠く聞こえる黄色い悲鳴に構うことも忘れ、俺はただ真っ赤な顔で沖田くんを見ていることしかできなかった。






+end+






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一応メルトを意識してみたりしたわけですが、あっさり撃沈しました。
可愛い話を書きたかったんだ……!
あ、ちなみに大学生パロ設定です。
自覚はしたけど絶対に認めたくない銀さんと、アプローチを欠かさない沖田くん←
私沖田くんのキャラを見失っている気がする……(汗)






2009.10.17.