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俺は山崎退。真選組の監察だ。 俺の仕事は監察のはずなのだが、もっぱらパシリなんかをさせられている。主に副長とか副長とか沖田隊長とかだ。 俺ってそんなにパシリやすい奴なのかなぁ…。 「おい山崎ィ!」 「は、はいっ!」 もの思いにふけっていた俺は、副長の声で我に返った。 今日の副長は機嫌が悪くて、返事が遅いとすぐに刀を抜く。斬られそうになるこっちはたまったもんじゃない。 副長のところに走っていくと、まず思い切り殴られた。 「え、え?」 「マヨネーズが切れてんじゃねぇか。昨日買っとけっつったよなぁ?」 「買ってきたじゃないですか!?」 「これじゃねぇんだよ! いつものヤツ買ってこい!」 「ええぇぇ!? マヨネーズなんてどれも一緒じゃねぇか!!」 思わず言い返すと、副長は腰に手をやった。カチャ、と刀をはじめとする抜く音がする。 あ、なんかイヤな予感。 「つべこべ言わずに買ってこい!」 「は、はいィィ〜」 副長の目がいつも以上にイっちゃってる。 俺は半分悲鳴を上げながらマヨネーズを買いに走ることになった。 スーパーを何軒回っても、「いつも」のマヨネーズは見つからなかった。どのマヨネーズも同じようなものだと思うけど、副長にとってはそうじゃないんだよな。しかも副長はマニアだから、そんじょそこらには売ってないものを欲しがる。買いに行かされるこっちの身にもなってみろってんだ。 …なんて、本人の前じゃ絶対に言えないけど。 最後の最後、この店しか残ってないと思った店で、やっと副長お気に入りのマヨネーズを発見した。 マヨネーズごときで走り回ってる俺って一体何なんだろう。 心の中で愚痴りながら、俺は急いで店を出た。 日はもう高く昇っている。命令されたのは朝だったから、かなりの時間がたっているようだ。帰っても副長に怒られそうだ。 なんて不幸なんだろう、俺。 今日は俺の誕生日だっていうのにパシられて……どうせ俺の誕生日なんて覚えちゃいないんだろうけど。 それもそれで寂しい気もする。 急ぐか、と呟いて、スーパーを出た途端に走り出す。けれど、周りをまったく気にしてなかったものだから、前にいた人とぶつかってしまった。 「わ、と…すみませんっ」 「…つつ……いってーなぁ……」 下げた頭の上に降ってきた声は、聞き慣れた声だった。 「だ、旦那!?」 万事屋の旦那がそこにいた。 本当に痛かったのか、旦那はしきりに腕をさすっている。ひとしきり痛い痛いと言い続けたあと、やっと旦那は俺に気づいた。 「ってアレ? ジミーくんじゃん」 「ジミーじゃねぇよ! 山崎だって言ってるじゃないですか!」 旦那はいつも俺をジミーと呼ぶ。何度訂正しても直らないから、もう半分諦めている。 「わかったわかったジミーくん。で、何やってんの?」 「わかってないでしょ……俺は…副長のパシリです」 こう言ってしまうのは抵抗があるけれども。 「ふぅん。多串くんもヒドい奴だなぁ」 「ははは…。旦那は何してたんですか?」 「ん〜散歩、かな」 江戸中に根を張っている旦那のことだから、今日もいろいろなところを回っていたのだろう。長所なんて探さなければ見つからない人なのに、この人はどうしてか人を惹きつける。 俺もまた、旦那に想いを寄せている。 旦那は今から屯所の近くを通って帰るらしい。どうせなら一緒に行きませんか、と言うと、意外にも簡単に了承を得られた。 ちょっと幸せかもしれない。旦那と2人っきり。しかも並んで歩けるなんて。 自然と口元が緩む。ニヤニヤ笑っていると、旦那に変な顔をされた。慌ててごまかして、別の話題を振る。 「あー…と、旦那。俺ってパシられやすいキャラなんですかねぇ」 何言ってんだ、俺。 「うーん…まあそうなんじゃね?」 しかも旦那、肯定しちゃうし。 「何? 何かあったわけ?」 「それがですねぇ」 珍しく旦那が興味を示してくれたようなので、ついつい俺は愚痴り始めた。監査役なのにパシられてばかりだとか、副長がすぐ殴ってくるとか、沖田隊長が無理難題を押しつけてくるとか。 愚痴り出したら、本当に止まらない。 「今日だって俺の誕生日だっていうのに、副長にはパシられるし…」 「へぇ、今日ジミーくんの誕生日なんだ?」 旦那は軽く目を見開いた。それから、考え込むように眉を寄せた。 「旦那?」 俺の言葉も無視して、旦那はゴソゴソとポケットを探っている。 「あー……あ、あったあった」 「何がですか?」 「これだよ、これ」 そう言って、旦那は俺に小さなものを投げてきた。受け止めたそれは、一口チョコレート。旦那の大好きな甘味だ。 俺は目を瞬かせて、旦那とチョコを何度も見比べる。 「まあ誕生日プレゼントってやつだ。不幸なジミーくんに銀さんからのプレゼントだよーってな」 旦那はニヤニヤと笑った。 ああ、神様。 俺は今までで一番幸せかもしれない。まさか旦那にプレゼントをもらえるなんて。 「あ、ありがとうございますっ」 俺は旦那の手を取ってお礼を言った。俺の異様な喜びように驚いたのか、旦那は少々引き気味だ。だが、そんなこと構いやしない。 「い、いいか、ジミーくん。銀さんが人に糖分やるなんて滅多にないんだからな。大事に食べろよ」 「はいっ!」 一口チョコレートだって、大事に大事に食べられる自信がある。 「それじゃーな」 気がつけば、別れ道に来てしまっていた。ふと寂しさがこみ上げる。 「またな、山崎くん」 「え……?」 旦那は振り向かないままひらひらと手を振りながら歩いていってしまった。 今、山崎って……。 俺は旦那の背中をずっと見送っていた。 屯所に帰れば、いつもと変わらない日常。今日が俺の誕生日なんて誰も覚えちゃいない。 だけど。 旦那がくれたチョコレートだけで、俺はこんなに幸せ。 +end+ +++++ 多分一年前に書いたモノ。 山崎くん大好きです。 報われない感が(←ヒドい 何気ない日常がものすごく幸せな山崎くんが大好き。 あ、俺山崎くんになりたいかも。 2008.2.3. |