「え、え? アンタが家庭教師?」
「そーですぜィ。よろしくでさァ」
「と、年下……じゃないよな?」
「確かに俺ァ童顔だけどねィ。れっきとした大学生でさァ」






【Can You Solve This Problem?】






 銀時の家庭教師、沖田が家にやってくるのは、毎週土曜日だ。勝手に家に入ってきては、ベッドの上でジャンプを読む銀時を無理やり机に向かわせる。
「せんせー、俺今勉強したい気分じゃないんだけど」
「アンタはいつだって勉強したい気分になんねェだろうが」
 頭をはたかれて、銀時が渋々教材を取り出すと、沖田は満足そうに頷く。
 その繰り返し。
「今日はここからここまでがノルマでさァ」
「先生、それ多くね?」
「全然。つか、アンタの学力考えたら少ないくらいでさァ」
「う……」
 銀時の成績はお世辞にもいいとはいえない。頭から数えるよりも尻から数える方がはるかに早いくらいだ。だからこそ、銀時の母親は家庭教師なんていう面倒なものをつけたのだ。
「じゃ、俺は寝てるんで、課題終わったら起してくだせェ」
 そう言って、沖田は独特のアイマスクをして銀時のベッドに寝転んだ。
 数秒後に聞こえてくる、穏やかな寝息。これもまた、いつものことだ。
 銀時は出そうになったため息を押し殺して、膨大な量のプリントと戦い始めた。






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「先生、プリント終わったぜ。なあ、先生ってば」
 一通り解き終え、沖田を起こそうと肩を揺さぶる。普段ならこれだけで起きるのに、今日に限って眠りが深い。よほど疲れているのか、身動き一つとらなかった。
「ったく、おい。先生のくせしてぐっすり寝入ってんじゃねーよ」
 沖田が眠るベッドの上に、銀時も沖田にまたがる形で乗る。そうして、そっとアイマスクを外してみた。
(ガキみたいガキみたいって思ってたけど……実は整った顔してるよな)
 今日に限って沖田は目を覚まさない。いつもなら銀時が近寄っただけでも目を覚ましていたというのに。
(黙ってりゃ大人っぽい……ってまあ、一応年上だし)
 誰にでも態度を変えない銀時の性格のせいか、普段はあまり沖田が年上であることを意識しない。だが、こうして改めて見てみると確かに沖田は大人だった。
 たった2、3年でも、埋められない何かがある。
「……ん」
 沖田がうっすらと目を開け、銀時をその瞳に映す。すっかり離れることを忘れていた銀時も体を起こそうとするのだが。
「んぅ!?」
 間近に見える沖田の顔。何が起こっているのかわからないまま、銀時は硬直する。
 その間にも、沖田のそれは止まることを知らず。
 ペロリ。
 唇を舐められた。
「……!!」
 沖田から離れようとして、ベッドから転げ落ちる。強かに腰を打ったが、そんなことに構う余裕もなかった。
(何、今の……つか、なんでこんな……!)
 口元を押さえて沖田を凝視する銀時。舐められた感触がまだリアルに残っていて、うるさいくらいに胸が騒いだ。
 完璧に目を覚ましたらしい沖田が身を起こすと、銀時はびくりと体を震わせた。
 どんな顔をすればいいのかわからない。
 沖田はベッドの下に倒れこんだ銀時を見て怪訝そうに眉を寄せる。
「何してんでィ、坂田。プリント終わったのかィ?」
「え、うん、まあ。終わったけど」
 それだけ答えるのが精いっぱいだった。不自然だとは思いつつも目を逸らしながら机へと戻る。
 あくびをする沖田の態度に変わったところは見られない。
 寝惚けていたのだろう。そうでなかったら男にキスなんかするものか。
 銀時は頬を叩いて気合を入れ直した。






+++++






「……で、ここがこうなるから……」
 静かな部屋に響くのは、シャーペンの滑る音と沖田の声。
 銀時の耳にだけは、駆け回る心臓の音が聞こえている。
 机について沖田の解説が始まったはいいものの、妙に沖田を意識してしまって勉強に集中できない。沖田を覗き見るとやたらと唇にばかり目がいくし、ノートを見ると耳に直接ボーイソプラノが届く。
(ムリムリムリ……こんなんで集中できるわけねーっての!)
 何かを振り払うように首を振ると、沖田に教科書の角で叩かれた。
「坂田ァ、ちゃんと聞いてんのかィ?」
 沖田の端正な顔が近づいてくる。異様に顔が近いと思うのは銀時の自意識過剰ではないはずだ。
「き、聞いてる。わかってるって」
「……まァよしとしやしょう。んじゃ、これ宿題」
「えぇ〜多いって先生」
「そんなんじゃ受験戦争は乗り切れねェぜィ」
 沖田は意地悪そうな笑みを浮かべ、銀時の額を小突いた。
「今日はここまで。また来週でさァ」
 来た時と同じように、沖田は勝手に出ていく。
 本当に勝手だ。銀時の心を掻き乱していることにすら、気づいていないくせに。
 恨めしいと思ってしまう。
「ああそうだ」
 声を上げた沖田は銀時のところへ戻ってきて、その細い指で銀時の顎を掬いあげる。殊更ゆっくりと、親指が唇をなぞった。
「この答えも、来週までに見つけておきなせェ」
 再度感じる、柔らかな何か。
 銀時が反応できないでいるうちに、沖田はさっさと部屋を出ていってしまった。
 しばらくして我に返った銀時は、沖田の意図を知り顔を真っ赤にさせる。
「あのヤロ……知っててやったのかよ!」
 一週間なんて長すぎる。
 銀時はもうその答えを知っているのだから。






+end+






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家庭教師×生徒でしたー。
沖田くん年上とか違和感ありありですよね。
しかもあんまり年上じゃないし……。
でもまあ沖田くんの意地悪っぷりはちょっとは出せたんじゃないかなぁと。
とはいうものの、突発パラレル多すぎですよね。
続かない(笑)
気が向いたら続くと思います←






2009.07.04