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誕生日、なんて、今まで縁のないモノで。 ずっと昔に、師であった松陽先生と高杉と桂と祝ったような気もするが戦争の記憶にかき消されて覚えていない。 他人を祝うのは好きだ。タダでご飯を食べられるしタダで酒を呑めるしタダで糖分を取れるし。 だけど、自分が祝ってもらうのは……苦手だ。どうしていいかわからないから。 本当に、戸惑う。 【happy? happy!!】 「銀さん、朝ですよ」 「銀ちゃ〜ん、起きるアルよ〜」 子供たちの声がする。 銀時はそう思いながらも目を開けようとはしなかった。昨日は掘り返したジャンプを遅くまで読み耽っていて、睡眠時間が足りないのだ。それに、今日はなんだか起こす時間が早い気がする。 もう少し、もう少し寝かせてくれ。 「銀さん? 起きないんですか」 「仕方ないマダオネ」 マダオって何だ、マダオって。一緒にするな。 そう思ったが、やっぱりまだ眠い。そうすると子供たちは大きなため息をついた。新八はともかく、神楽まで。 「ぎーんちゃんっ」 「ぐぇっ」 銀時が蛙が潰されたような声を出したのと、神楽が凶悪な笑みを浮かべたのはほぼ同時だった。神楽は容赦なく銀時の腹の上に乗っかって、何度も何度も跳ねる。 「おはよう、銀ちゃん」 向けられる声音はどこまでも楽しげなのにやっていることは殺人的行為以外にない。銀時は死にそうになりながら神楽を追いやるしかなかった。 「おはようございます」 気がつけば凶悪少女の隣に(つまりは銀時の上に)眼鏡少年も乗っかっていて、銀時は不思議そうに首を傾げた。 常日頃の彼は銀時を布団から転がり落としこそすれ、銀時の上に乗ったことはない。少年の行動は何を意味するのだろう。 少年と少女はくすりと笑いあって、せーの、と声を合わせた。 「「お誕生日おめでとう(ございます)!!」」 「へ?」 自分はなんて間抜けな返事をしたのだろう。 銀時は後になって頭を抱えた。 +++++ 「誕生日か……すっかり忘れてたな…」 本当に、すっかり忘れてしまっていた。 今日が何日かは忘れていなかったし、新八の誕生日も神楽の誕生日も覚えている。自分の誕生日だけがすっぽり抜け落ちていた。 「まったく、仕方ないですね…」 「銀ちゃんも年アルなぁ〜」 「うるせーよ」 バシッといい音をたてて神楽の頭を叩く銀時。その表情にはいつもと変わったところはなくて、新八は知らず知らず息を吐いた。 誕生日を祝った時、銀時は一瞬困ったような顔をした。どうしていいかわからない。そんな表情だった。 新八は銀時の過去を知らない。あまりいい思い出はないのだろうと考えている。だけど現在は過去ではないから。 みんな銀時を祝いたいのだと知ってほしい。大切にされるべき存在なのだと知ってほしい。 新八はふっと息を吐いて着替え終わった銀時の手を引いた。 知らないのなら、思い知らせればいいだけだ。 「銀さん、神楽ちゃん、買い出し行くよ」 「キャッホォォォイ!! 今日はご馳走アル!」 神楽が、もう片方の手を引いて。 「早く行こっ銀ちゃん!」 「ったく、しょうがねーなー」 三人でかぶき町へと繰り出した。 +++++ 銀時は老若男女に愛されている。 銀時自身が知らないだけで。それは神楽たちが妨害工作を働いたというのも原因のひとつではあるが、あからさまに邪な視線を向ける男相手では仕方がないことだろう。 例えば、真選組幹部プラスアルファとか。 「だーんなっ」 「おわっ」 子供のように飛びついてきたのは、真選組隊長の沖田。遅れて副長の土方もやってくる。 「ねぇ旦那。今晩ウチに呑みに来やせんかィ? いい酒があるんでさァ」 「ダメアル! 今日は万事屋でパーティーアルよ」 沖田と同じように銀時に抱きつく神楽。前に神楽、後ろに沖田で銀時は圧迫されそうだ。 「うるせェ。ガキは黙ってろィ」 「お前だって未成年だろーが」 銀時が顔の真横にある頭を撫でてやると、沖田はくすぐったそうに笑う。拗ねないように神楽の頭も撫でてやった。 「細かいことは気にすんな。近藤さんもいいって言ってるしな」 「多串くんはいいわけ? いつも俺が来るの嫌がってんじゃん」 どういう風の吹き回しだと言外に言うと、土方は珍しく眉間の皺を緩めた。 「いいんだよ、今日は」 あんまり穏やかに笑うから、思わず銀時は赤面して目を逸らしてしまう。面白くなさげに沖田と神楽が土方を蹴った。 「テメェら……!」 「旦那、屯所来るだろィ? 仕方ねェからガキ共も一緒でいいですぜィ」 「仕方ないからとは何ネ。銀ちゃんがいるところ私ありヨ」 「僕も忘れないでくださいね」 どうする? と四つの視線に迫られて銀時は流されるように頷いた。子供たちが大喜びして、土方も満足そうに煙草を吹かす。 「あー、と、これ、誕生日プレゼントってやつ?」 戸惑いがちに言うと、沖田が銀時の両手を握った。真正面から見つめられて無闇にドキドキしてしまう。 「そのひとつ、でさァ」 「なんで…?」 「旦那が好きだからでさァ」 直球ど真ん中の告白に銀時は顔を真っ赤にした。土方や神楽が憤慨して沖田を追い回す一方で、口元に手を当て綺麗に微笑む。 「ありがと、な……」 隣でその表情を見た新八は、それこそ見たかった笑顔だと思った。 +++++ 「で、」 「で?」 「なんでアイツがいるんだよ」 屯所の宴会場に銀時たちを誘い、真選組全員で迎えたのはいいのだが。くっついてきた招かれざる客に土方は頭を抱えた。 「なんでって、お宅の局長さんが呼んだんでしょ?」 土方にしてみれば、こっそり銀時を招きささやかなパーティーを開いてやるつもりだったのに、近藤に知られたのが運の尽きだったのかもしれない。問題の招かれざるの客は敬愛すべき局長をボコボコにしている。 普段なら止めに入るのだが、今回は見逃しておいた。 ムカつくから。 「いいじゃん。人数多い方が楽しいって」 けらけら笑う銀時はすでに出来上がっているらしい。呂律が回っていない。 「あのな…」 「旦那がこう言ってんだからいいことにしとけよ土方。あ、旦那もう一杯」 「ありがとー」 「総悟テメェは何酒呑んでんだ!!」 沖田が酒を持ち出したことにより、パーティーは一変して飲み会になってしまった。 神楽は早々に酔いつぶれて銀時に背を預けて眠っている。近藤は相変わらずだしお妙も以下同文。新八はひっきりなしに隊士の世話を焼いていて、山崎もそれを手伝っている。主役の銀時は右に沖田、左に土方をはべらせご満悦だ。 土方は、とりあえず銀時が幸せそうなので他の面々には目を瞑ることにした。これ以上考えると頭が痛い。 「多串くんも飲め〜」 「はいはい…」 たっぷりと注がれた杯を一気に飲み干す。キツい酒だが土方にはちょうど良かった。 「いい飲みっぷり〜。多串くん酒強いんだねぇ」 「まあ、な」 そういう銀時は酒に弱いのだろう。赤くなった顔に潤んだ目、呂律の回らない口調。酒の暑さか胸元を思い切りはだけさせて。 いちいち色気を振りまいていて耐える方としてはつらいものがある。 「旦那ァ、土方さんにばっか構ってないで俺も構ってくだせェ」 らしくなく甘えた口調で銀時の着物の袖を引く沖田。沖田も酔ったらしい。 その声に応えて、銀時は沖田に向き直り頭を撫でてやった。土方は眉間に皺を寄せたが、沖田に構うななどと子供みたいなことは言えず。銀時が注いだ酒をあおった。 「誕生日って楽しいんだなぁ」 「は?」 唐突な銀時の言葉に目を瞬かせる両側の二人。 「俺誕生日祝ったことねぇからさ〜」 だからなのか、と少し納得する。どこか戸惑いを隠せないような気がしたのは。 「じゃあ旦那、来年からは毎年俺らが祝ってあげまさァ」 「え」 来年、も毎年、もないと思っていたらしく、銀時はきょとんと目を丸くした。 「来年もあんの?」 「当たり前だろ」 「毎年?」 「当然でさァ」 重ねて言えば、銀時は照れたように表情を緩めた。土方はぐしゃぐしゃと頭を撫で、沖田は頬を擦り寄せる。 「ずっと、祝ってやるよ」 「誕生日おめでとうございまさァ、旦那」 この後、目が覚めた神楽と沖田が乱闘になったり次々に隊士たちが甘味を渡しに来て土方がキレたりしたのは、また別のお話。 +end+ +++++ 銀さん、誕生日おめでとうございますっ!! なのにこの駄文加減何… しかも遅いし! いえいえ、銀さんへの愛はありますよっvV なんかシリアスチックですけど、みんな銀さん大好きなんです 愛してるんです ……でも人数多いと大変だな(笑) いらないとは思いますが10月26日くらいまでフリーです ※フリー配布は終了しました 2008.10.12. |