日曜日の至福は昼まで寝ていられることだと、銀時は常々思っている。
 学校は嫌いではないけど、毎朝早く起きなければならないのが辛い。銀時は一人暮らしであるため、自分で起きなければならないし。
 そんなことを夢うつつに考えながら、銀時は寝返りを打った。だが、銀時の至福を奪うかのように、玄関のチャイムが鳴った。
 無視して寝ようと思ったのだが、玄関のチャイムは鳴りやまない。諦めるつもりがない訪問者に苛々した銀時は、布団を蹴りあげ起き上がった。
「うるせーよ! せっかくの休みくらい寝かせろ!!」
 ドアを開けるなり怒鳴りつける。新聞の勧誘か何かだと思っていた訪問者は、怒鳴り声にもまったく動じない。
 少し落ち着いた銀時が改めて玄関先を見ると、そこにはクラスメイトの高杉が立っていた。
「あ? 高杉?」
 思いがけない人物に呆気にとられてしまう。
 高杉はよう、と声をかけると、勝手に部屋の中に入って行った。
「ちょ、待てよお前!」
 銀時の制止も聞かず、高杉は部屋の隅に置いてあるソファに座る。どっかりと座る様子は、初めて人の家に来たようには見えんない。
 銀時は頭をぐしゃぐしゃに掻いて、諦めたため息をついた。それを見て、高杉が小さく笑う。他人事のような笑みがかなりイラついた。
「何なんですか、高杉くん? 人の安眠邪魔しやがって」
「こんな時間まで寝てんじゃねぇよ」
「うるせー」
 起きてしまったのは仕方ないと、銀時はキッチンへ行く。何か食べるものがないかと思ったが、チョコレートしか入っていなかった。あとで買い物に行こうと決めて、チョコレートに手を伸ばした。
 開けようとすると高杉が後ろからのしかかってくる。
「なァ銀時ィ。何か俺に渡すもんねェのか?」
「はぁ? 何を」
 聞き返すと高杉は黙ってしまう。どこか呆れたようなため息が零された。
 何なんだ、と思いながら高杉の腕を叩く。腕はしっかりと腰に回されていて、動けない。
 無理やり動こうとして、逆に強く抱きしめられた。高杉の息が首にかかって、体が緊張に固まる。
「今日は何の日だ?」
「今日? 今日って何かの日だっけ……つか、耳元で喋んな」
 この状況に気を取られて、思考がうまく働かない。それなのに、高杉は銀時から離れる様子も、耳元で喋るのをやめる様子もない。身を捩るけれど、逃げられるはずもなかった。
「今日は二月十四日だ」
「二月十四日って、ああ、バレンタインか」
「ああ。そうだ。だから、俺に渡すもんがあるだろ?」
 渡すものと言われても、銀時にはさっぱり心当たりがない。
 バレンタインチョコなら、高杉は昨日クラスの女子からたくさんもらっていたし、そもそも銀時から渡す理由がない。高杉とは今年一緒のクラスになっただけの、ただのクラスメイトなのだから。もっと言うなら特別仲がいいというわけでもない。
 疑問符を浮かべていると、高杉が肩手を銀時の手に重ねた。ビクついた銀時をよそに、封が開いたチョコレートが高杉に奪われる。
「ねェならこれをもらうしかねェな」
「俺のチョコ!」
 背後でパキッという音がして、チョコレートが割られたのがわかった。高杉が食べると思ったチョコレートは銀時の口に押し付けられる。そして、体を反転させられると、顎を片手で固定された。もう片方の手は逃げられないように腰に回される。
「んっ!?」
 チョコレートを咥えた唇に高杉の薄いそれが触れて、念入りに口の中を舐めとられる。腕を叩いて無理な体勢に体が痛いと訴えるが、抵抗空しくますます深く口づけられた。思う存分咥内を舐めまわした高杉が満足して唇を離すと、二人の間に銀色の糸が繋がった。
 ペロリ、と唇を舐める高杉は壮絶な色気を醸し出していた。
「は、ぁ……。何、なんで……」
 口の中が甘い。きっとチョコレートのせいだけではないと思う。
 銀時が息も絶え絶えに尋ねると、高杉は楽しそうに片目を細めた。激しいキスに力の抜けた銀時は高杉に支えられている。ますます逃げられない。
「チョコが欲しかったんだよ」
「お前昨日女子にもらってたじゃん」
「お前からのチョコが欲しかった」
「え……」
 思わず呆然と高杉を見返した。俺様気質なはずの高杉は、どこか照れているようにも見えた。
 銀時の顔もつられて赤くなった。
 男同士が赤い顔で、至近距離で見つめ合っている図は薄ら寒いものがある。しかし、そんなことを考える余裕もないほど、銀時は緊張していた。多分、高杉も。
 赤い顔をしたまま、高杉は真剣に銀時を見つめた。
「お前が好きだから、お前からのチョコが欲しかったんだよ」
 はっきりと気持ちを告げられて、心臓が高鳴った。昨日までただの友人でしかなかったのに、あんなことをするからどうしたって意識してしまう。
 高杉のことは嫌いではない。けれど、そういう意味で好きかと言われると、銀時自身わからない。
 高杉もそれをわかっているのか、真剣な表情を崩してふっと笑う。
「答えは今度でいい」
 硬直する銀時の額に優しく口付けて、高杉はあっさりと離れていく。最後に銀髪をくしゃりと撫でると、来たときと同じように突然帰っていった。
 何が何なのかわからず、銀時はその場に座り込む。顔が熱くて、それ以上に唇が熱かった。唇をなぞると、激しかったキスが思いだされて動悸が激しくなった。
 答えは今度でいい。
 高杉はそう言った。そう言った、けれど。
「今度って、明日じゃん……」
 今日は日曜日。
 明日は月曜日で、当然学校がある。高杉は同じクラスなのだから、絶対会うに決まっている。
 銀時は赤い顔を押さえながら、困ったように息を吐いた。
「好きになっちゃったみたいだから困る……」
 自分ひとりしかいない部屋で、ぽつりと呟いた。






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一応バレンタイン間に合いましたよね!
やったね! 高銀書けたよ!
純情高杉くんは可愛いです。
強引なのも好きですが、こんな高杉も好き。
次の日学校行って銀時の返事が怖くて顔見れないといいよ。
相変わらず銀さんが乙女なのには目を瞑るようにお願いします(笑)


お題は恋したくなるお題様よりお借りしました。






2010.02.14.