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さくさくと、軽い音を立てて雪の上を歩く。二、三日降り続いた雪は見事に積もり、町は雪化粧に包まれた。今もひらひらと雪が舞っている。 雪の降る寒い夜、しかも聖なる夜とあって、外を歩く人はまばらだ。傘を差しゆっくり道を歩く銀時と擦れ違うのは、幸せそうな恋人たちか家族連れくらいのものだ。 そんな道行く人々を見ながら、銀時は無意識に手に持った紙袋を持ち直した。 小さめの紙袋の中には、銀時が編んだマフラーが入っている。濃い茶色のマフラーで、両端に水色でSと入れてある。 我ながら上出来だと銀時は一人ごちた。 クリスマスとはいえ仕事が忙しい恋人の職場に、クリスマスプレゼントを持って行ってやろうと思いついたのは昨日のこと。仕事なのだから仕方ないと諦めていたが、少しくらいならいいだろうと考え直したのだ。もし会えなくても、プレゼントだけでも置いておくことにして。 そういうわけで、銀時は一人、真選組屯所に向かっている。 日付こそ変わらないが、もう夜も遅い。もしかしたら沖田は見回りに行っているかもしれない。そうは思うものの、足は止まらない。 そろそろ三十路に手が届くというのに、子供のような浮かれっぷりだ。 「ったく、何やってんだか……あ」 途中、公園の入り口で足を止める。公園自体はよくある公園なのだが、そこはクリスマスのデートスポットとなっているのか、公園の中心に置かれたツリーにたくさんの人が集まっている。 銀時が目を奪われたのは、そのツリーのイルミネーションだった。 もみの木に巻きつく電飾の色は、幻想的なブルー。ツリーの飾りも電飾で作られていて、プレゼントの箱やろうそく、人形などが淡い光を放っている。一番上のベツレヘムの星だけが強い黄色だった。 ツリーの周りだけがまるで違う世界のように見えた。 「すご……」 「あれ、旦那?」 思わず感嘆の声を漏らした途端に、背後から声をかけられた。幻想的な世界に入り込んでいたため、異様なほど肩が跳ねる。 うるさくなった鼓動を落ち着かせながら振り返ると、忙しいはずの恋人がそこにいた。 「沖田くん……?」 彼がいることが信じられず、銀時は瞬きを繰り返す。 沖田はいつもの隊服に防寒具も付けていなかった。傘を差していないので、肩に雪が積もっている。手袋もない手は冷たそうだ。 「なんで君がこんなところにいんの?」 「仕事中でさァ。アンタを見つけたんで来てみやした」 それはつまりサボりだということで。 不意に、眉間に皺を寄せているだろう彼の上司が思い浮かんで、苦笑を漏らした。今に始まったことではないが、彼は本当に苦労人だ。 「仕事しやがれ、この給料泥棒。仕事のない俺に対するあてつけかよ」 「アンタがいるからでさァ。アンタがいたら気になって仕事になりゃしない」 「何それ。俺のせいですかー」 「違いまさァ」 そこで言葉を切り、沖田はじっと銀時を見つめた。真剣な瞳に胸が高鳴る。息を詰めると、沖田が邪気のない笑みを見せた。 「仕事よりアンタが大事ってことです」 顔に熱が集まるのがわかった。空気が冷たいから余計に熱く感じる。 きっと耳まで赤くなっているに違いない。 「あー、そうですか。俺って愛されてるー」 「そりゃ、愛してますから」 茶化すように言ってみるものの、沖田は真面目に返してくる。普段とは違う、銀時だけに見せる無邪気な笑顔に咄嗟に反論することもできなかった。 「ああ、そうだ」 恥ずかしさに耐えられなくなり、無理に話題を逸らす。忘れていた紙袋の存在を思い出した、ということにして、飾り気のないそれを沖田に押し付けるように手渡した。 「何ですかィ、これ」 「あー、と、クリスマスプレゼント、みたいな」 驚いたように目を見開いた沖田は、早速紙袋を開けた。沖田の目の前に、栗色のマフラーが広げられる。 それを銀時はいたたまれない気持ちで見ていた。反応がない沖田にだんだんと不安が浮かんでくる。 いらないならいい、と言おうとして口を開いた瞬間、呆然とした声が耳に入った。 「……ありがとうございます」 喜んでいるのか迷惑に思っているのか、声からでは判断できない。顔も俯き気味で表情も見えない。 嫌だったのかと思い、マフラーに手を伸ばすと、冷たい手が銀時の手を包み込んだ。痛みにも似た冷たさにその手を握り返した。 「アンタからもらえるとは思ってなかったんで、正直驚いてまさァ」 「俺はそんな薄情じゃねーよ。そ、その、こここ恋人、なんだし」 付き合ってもう数カ月になるのに、未だ恋人とは言いなれない。 沖田に言わせるとそれが可愛いらしい。嬉しそうに顔を綻ばせている。 繋がった手を引き寄せるようにして、一歩、沖田が近づいてくる。 「聖夜に会えたってだけで十分嬉しいのに、どれだけ俺を喜ばせりゃあ気が済むんでィ」 真っ直ぐな言葉はじわじわと心に染みて、ますます銀時の体を熱くさせた。 聖なる夜、幻想的なツリーの前で、甘い言葉。柄にもなくときめいてしまう。 「バカなこと言ってんじゃねーよ」 繋いだ手を振り払い、大事そうに握られたマフラーを奪う。沖田が何かを言う前に、寒そうな首に巻いてやった。彼の栗色の髪に濃い茶色のマフラーはよく似合っていた。 ぽんぽん、と頭を撫でて、完成を伝える。 「ほら、仕事行け仕事」 「もうちょっとくらい、いいじゃないですかィ」 「サボってんだからダメに決まってるだろーが」 「ちぇ、アンタはそうやっていつも俺を子供扱いするんだから」 拗ねたような表情に笑みを浮かべて、銀時は踵を返した。 目的は達した。もうここには用はない。 というのは建前で、単に彼を見ていられなくなっただけなのだけれど。 早足でその場を去る銀時の背に、楽しそうな声がかかる。 「明日は俺が会いに行きまさァ!」 辺りに響く大声にも、銀時は振り返らなかった。 +end+ +++++ クリスマスだよ、坂田さん! きっと銀さんはクリスマスも暇なんだと思います。 沖田くんが忙しくて寂しいんです。 家族パーティも楽しいけど、私はラブラブしててくれるのが嬉しいvV のろのろ更新ですみません(汗) 2009.12.17. |