【拾ってしまいました】






 ある寒い冬の日。真選組副長坂田銀時は、どんより曇る空を見上げ息を吐いた。
 昼だというのに暗い空。きっと今夜にでも今年初の雪が降るだろう。ただでさえ寒いのにさらに寒くなってしまう。
「見回り行きたくねぇなぁ。サボっちゃおうかなー」
 副長らしからぬセリフだが、聞き咎める隊士は誰もいない。銀時のサボリ癖はいつものことだ。
 屯所の門をくぐった銀時は、道のど真ん中に横たわるモノに気づいて足を止めた。
「…………何」
 雪さえ降りそうな寒空の下、黒い着流し一枚で倒れているソレ。
 人、と一概に言ってしまえないのは、ソレに着物と同じく黒い色をしたふさふさの耳と尻尾がついているからだ。多分天人か何かだろう。
 ふと興味が湧いた銀時はそっと近づいて耳をつついてみる。見た目通りの触り心地に夢中になって耳を撫で回した。
「…んぅ」
 銀時に背を向けていたソレが上体を起こし銀時を見上げる。
 黒髪に似合う暗い色の瞳。寝起きの表情は幼くて、可愛いと思ってしまう。
 と、思ってしまったのが間違いで。
「おわっ」
 いきなり抱き寄せられ、銀時は強かに膝を打った。
「痛てーな、オイ。何すんのお前…」
 銀時の問いには答えず、ソレはさらに腕に力を込める。強すぎることはないがどこか縋るような腕を振り払えない。
「寒い」
 一言ポツリと呟くと、ソレは気を失った。
 銀時を抱きしめたまま。
 緩やかな拘束は銀時を放そうとせず、銀時は動くこともできない。
「――って、手ェ離せぇぇぇ!!」
 銀時の叫び声に気づいた隊士たちが様子を見に来たのは、それから十分後のことだった。






+++++