「ただいまー」
 やる気のない声が真選組屯所内に響き渡る。その声に一番に反応したらしい黒い犬が走ってきたのを見て、銀時は表情を緩めた。
「おかえり、銀時」
 黒い犬――トシは、千切れんばかりに尻尾を振って銀時を出迎えた。銀時が帰ってきたのがよほど嬉しいらしい。
「見回りお疲れ。腹減っただろ? 休憩しようぜ」
 変化のない顔とは対照的に正直に喜びを表す尻尾。可愛い可愛い黒い犬は、早く早くと腕を引っ張った。
「んな急がなくてもまだ時間あるって」
「俺とお前の時間は少ねぇんだよ。それより、今日は甘味もあるんだぜ」
 どこか誇らしげに言うトシに、銀時は吃驚して足を止めた。
「甘味って、なんで!?」
「俺が買ってきた」
「うそ、お前外出たの? ちゃんと耳隠した? 尻尾は?」
「隠したっての」
 慌てて耳やら尻尾やらを触る銀時に、トシは眉をしかめる。
「お前に迷惑がかかるようなことはしねぇよ」
「よかった〜」
 銀時はホッと息をつく。
 もしトシのことが上にバレて幕府に引き取られようものなら、銀時とトシは離ればなれになってしまう。それだけは避けたかった。
 今はまだ手放したくない。
 お前はまだ、俺だけの犬でいて。
 笑みを深めた銀時は、さらさらの黒髪をぐしゃぐしゃにかき回した。
「何すんだよっ」
「銀さんのために甘味買ってきてくれるなんて、嬉しいなぁってね」
 愛しい想いは決して口にしてやらないけれど。
「じゃ、お前が買ってきた甘味でお茶でもしますか」
「おう」
 お前ならわかってくれるだろう?






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