突然ですが、俺、坂田銀時は、悩んでいます。
 行きつけの甘味屋で団子を食べながら、俺はうんうん唸った。せっかくの団子もあんまり味がしない。なけなしの金で団子を買ってるというのに。
 そのそもそもの原因は、真選組一番隊隊長の沖田総悟、この子どもだ。もう沖田くんなんか子どもで十分だね。子ども子ども。で、その子どもがどうしたのかというと、最近ぱったりと姿を見せなくなったのだ。
 別に俺と沖田くんは特別仲がいいってわけじゃないし? 気にすることはないかもしれない。
 だけど、だけどだよ。会わなくなるまでは、沖田くんはずっと俺に求愛してきていたんだぜ。毎日毎日俺のいるところに押しかけては、好きです、愛してます、旦那が恋愛感情で好きなんですって散々。俺がどこにいたって絶対見つけ出して、一日一回は愛の言葉を囁きにきてた。
 それがぱったり来なくなったらいやでも気になるってもんだろ? 俺のこと嫌いになったのかとか、飽きたのかとか、もしかしたら何か大きな事件に巻き込まれてるのかとか。
 俺が沖田くんのことどう思ってるかって? そりゃ生意気で大人ぶったガキだと思ってるけどさ。あいつの尊敬する大将の前でも大人ぶった態度を崩さないあいつが俺の前では年相応に笑ったり拗ねたりするのを見るのは好きだ。俺には情けないツラ見せたりするのも。
「旦那、それ惚気だよ。十分その真選組の隊長さんのこと好きでしょ」
 ずっと俺の話を聞いていた団子屋の店長がいう。いやいやいや、そんなことないって。だって、俺もあいつも男だぜ? ないないない、絶対ない。
「でも、隊長さんは旦那のこと好きだって言ってたんでしょう?」
 そりゃそうだけどさ……。
 渋って認めようとしない俺の背中を、店長はバシン、と力強く叩いた。
「とにかく、会いに行ってみたらどうだい? 本人から話聞かなきゃ、わかんないだろう」
「そ、そうだな。風邪かなんかかもしんねぇし」
 ということで、俺は沖田くんのところに行くことになった。それにしても店長、背中痛い。






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 真選組屯所について、真正面から訪ねると、対応に出てきたのはジミーだった。
「ジミーじゃなくて山崎です!」
 うんうん、ジミーくんね。
「いっても無駄ですよね……えっと、ご用は?」
「沖田くんいる?」
「沖田隊長ですか? 部屋にいると思いますよ」
 そういってジミーは俺を沖田くんの部屋まで案内してくれた。適当に礼を言って、沖田くんの部屋の前に立つ。何度か訪れたことのある部屋だけど、今は知らない部屋のようで入るのが怖かった。
 緊張を紛らわすため、深呼吸をひとつ、二つ。思いきって、障子に手をかけた。
「沖田くん!」
 沖田くんは机に向かって書類仕事をしていた。俺がいきなり入ってくるとびっくりした表情で俺を見上げた。子どもみたいな表情が少し可愛い……じゃなくて。
「最近外出てないの、なんで!? 俺のこと避けてるだろ!?」
 怒鳴りつける俺に、沖田くんは顔を輝かせた。ぱあ、と花が咲くみたいに満面の笑顔だ。そして俺の手を取って、ぶんぶんと振る。
「旦那! 俺のこと好きになってくれたんですね!!」
 はい?
 そう答えるしかなかった。沖田くんが何を言っているのかわからない。俺は沖田くんのこと好きじゃ、ない、ぞ。
 混乱する俺を引き倒す形で抱きついてきた沖田くんは、俺を下敷きにしてそれはそれは嬉しそうに語り始めた。
「だって、最近会いに来ない俺を気にしてここまで来てくれたんだろィ? 本当にどうでもいいなら俺のことなんかほっとくはずでさァ」
 特別仲が良かったわけじゃない。わざわざ沖田くんのところまで行く必要なんて、なかった。それでもここまで来てしまったのは、そういうことだから?
「わざわざ旦那に会うの我慢した甲斐があったぜィ」
「わざとか!」
「これも恋の駆け引きってやつですぜィ。で、あんたはそれに引っかかったってわけだ」
 言い終わると同時に、唇が降ってくる。一瞬触れて離れるだけの、柔らかな。身を竦めた俺だったけど、嫌な感じはしなかった。むしろ、触れられて嬉しいと思うような。
「んな、馬鹿な」
「さっさと認めちまえよ。俺のこと、好きだろィ?」
 もう一度降ってきた唇。やっぱり嫌だとは思わなかった。






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2011.09.28.