今日の天気は、もともとよくなかった。天気予報は一日曇りと告げ、空を見上げても暗い雲が立ち込めるばかりで。
 雨が降らないうちに帰ってこいよ、と子供たちを追い出し沖田が来るのを待って、そうして銀時たちが出かけようとした途端がこれだ。どんよりと曇った空は、沖田が来ると同時に盛大に泣き出した。雨足はだんだん強くなり、これでは傘をさしていても濡れるだろう。
 神楽と新八にはまあ頑張れと心の中でエールを送っておいて、銀時は沖田に視線を向けた。
「どーする沖田くん。デートどころの話じゃなくなったよコレ」
「そーですねィ。この雨じゃどこ行っても濡れねずみでさァ」
「雨やむまで待つか?」
「いや……今日はお家デートってことで」
 疑問符を浮かべる銀時に、沖田は銀時にしか見せない必殺の笑みを浮かべて。
「恋人の家でくつろぎましょーやってことでさァ」
 銀時は呆気なく陥落した。恋人のとびきりの笑顔に目眩を覚えながら、「あ、そう」と返して定位置の椅子に座る。何気なくジャンプを手にとって読み始めると、沖田も本をとってきてソファに座った。
 実際はあまり使われることはないのだが、万事屋にはちゃんとジャンプ以外の本もあった。剣術の本や思想の本や、若かりし頃の思い出のようなものだ。万事屋で過ごす時、大抵沖田はその中から本を選ぶ。少しでも銀時を知りたい、というのが沖田の本音だ。
 今はジャンプ以外のものを滅多に読まない銀時は、奇妙な面持ちでそれを見ていた。俺が読んでた本読みたいなんて可愛いとこあんじゃねーの、と思う反面、自分の過去まで思いやられて複雑だ。
(ま、いいんだけどね)
 沖田が真剣に本を読んでいる様子は、普段ではとても見られるものではないので、喜んで目に留めておきたい。
 そうして、改めて彼を見やる。ソファに座り、本を読む沖田。長い脚を組み片手に本を持ち、時折、もう片方の手で煩わしそうに髪を掻きあげてまた本に没頭する。
 ただ本を読んでいるだけなのだが、その仕草が何とも言えず。
(格好いい……んだよなぁ)
 銀時自身もページをめくってはみるのだが、視界の端に映る沖田のおかげでまったく頭に入ってこない。バレないようにさりげなく視線を流し、挙げ句の果てには見つめてしまう始末。自分がどれだけこの男に惚れているのか思い知るような気がしてどうしようもない気分なのに、目を離すことはできなくて。
 呆れ混じりのため息しか出ない。
 長く細い指がページをめくる。それだけの仕草にすらドキリとして。ますます内容がわからなくなる。
(あーもう! 何なわけコレ何考えてんだよ俺!)
 と自分に問えば。
(沖田くんのことしか考えてない……ような気がしないでもない)
 と答えられる自分が悲しい。
 思い返してみれば、何をするにしても彼の影がちらついて勝手にドキドキすることが多いようだ。いい年した大人が(しかもオッサンが)恥ずかしいものだ。
「あぁ〜…」
 声には出さず呟いて、銀時はジャンプに顔を埋めた。






+++++






 百面相。
 普段自分の感情をあまり露わにしようとしない(つまりは素直でない)銀時が、百面相。
 本を読みつつも意識は完全に銀時に向かっていた沖田は、内心苦笑を漏らす。
 普段、つまり神楽やら新八やら土方やら、沖田にとっては邪魔でしかないオプションがついている時の銀時は、飄々としていて掴み所がなく、常に余裕たっぷりで人をおちょくるのが好きで、素直や実直とは程遠い場所にいる。それが、一旦二人きりになると銀時は存外素直だ。沖田の言葉に赤くなってみたり青くなってみたり、余裕のない銀時の仕草に心惹かれる。
 今のようにくるくると表情を変え、銀時は忙しい。
(いつものポーカーフェイスはどこいったんでィって話でさァ)
 大切だとか愛しいとか、そういった感情は胸に閉まって、まさに背中で語るのが銀時だったはずなのだけれど。
(そんなとこ含めて、好きになっちまってんですけどねィ)
 結局のところ、それが銀時に起因し関係するものであれば何でも好きになれてしまうのだろうと、沖田は胸中で一人ごちた。
 時々万事屋で読むこの本たちもそうだ。自分なんかには想像もつかない、銀時の壮絶な過去と抱えてきた想い。この本たちには、その欠片が隠されている。
 最初は、自分の知らない銀時がいることが嫌だった。懐かしそうに、哀しそうに過去を想う銀時を見るのが嫌だった。沖田が好きになったのは今の銀時で、今の銀時しか知らないけれど、それがあってこそ今の銀時があると考えると、嫌だと思う気持ちは瞬く間に消えた。銀時が大切にしてきたものを、大切にしているものを、同じように大切にしたいと思えるようになったのだ。
 すべてを知ることなどできなくても、知り得る限りの銀時を知り、守ってやりたいと思うから。
(旦那だったら何でも愛しいってのは、ベタ惚れすぎかィ)
 それでも、どんどん溺れていく。底なし沼のように止まるところを知らなくて。
(けど、俺だけ溺れてんのは癪に障りまさァ)
 二人きりの時の銀時はやけに素直ではあるが、何を考えているかまでは読み取れない。沖田の子供っぽい感情はいつも見透かされているのに。
 悔しい、と思う。
「……ん?」
 本を閉じ急に立ち上がった沖田に、銀時は敏感に反応しジャンプから顔を上げる。今にもどうした? と聞いてきそうな銀時に歩み寄り、おもむろに唇を寄せた。
 糖分過多の、甘い味。
「え……」
「ごちそーさまでさァ」
「おま、いきなり、何…」
 慌てた銀時に構うことはせずソファに戻り、沖田は再度本を開いた。口元には、してやったりの笑みを浮かべて。
 銀時が言葉を失い、キッと沖田を睨みつける。キスに潤んだ瞳では迫力に欠けるが、それさえも愛しい。笑みを浮かべたまま、はらりとページを捲れば。
「沖田くんのバカヤロー!!」
 ジャンプが飛んできた。






+end+






+++++



アンケ一位、ラブラブ沖銀でしたvV
ノロケ話〜と思って書いたんですが、甘ったるいですね、この人たち。
うちの沖銀は基本こんな感じです(笑)


ではでは、遅くはなりましたが、五千打ありがとうございました!
フリーですのでじゃんじゃんもらってっちゃってください←
ご報告いただけたら嬉しいですvV


フーリ


2009.3.5.