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俺の心はまだ、落ち着いてなんかいなくて。 「よォ、沖田くん」 俺が不安定なのはあなたも知っているはずなのに。 「団子食いに行かねぇ?」 もしかしたらあなたを斬ってしまうかもしれないのに。 「今日は俺が奢ってやるよ」 いつものように、旦那は俺を誘う。 +++++ 姉上が死んだ。 片田舎に残してきた唯一の肉親。 俺の大切な人。 俺の世界。 姉上が死んで、俺の世界は色を失った。 何をする気にもならなくて、何を話す気にもならなくて、何を食べる気にもならなかった。 死んでしまっても構わないとさえ、思った。 断ることもできたはずなのに、俺は旦那についていった。 旦那は何かを話していたけど、何も耳に入ってこなかった。 団子屋について、俺と旦那は団子を食べた。 ものを食べたのは久しぶりだった。 どうしてこんなにも世界は変わらないんだろう。 あの人はもういないのに。 大切なモノはもうないというのに。 一層気分が落ち込んだ。 団子を食べる手を止めて、意識を腰に差した刀に向ける。 今ならきっと、誰だって殺せる。 目の前を通った天人も、走り抜けた子供も、絶対に勝てなかった土方さんも、あのチャイナも。 旦那、だって――。 旦那は団子を食べ終えたようだった。 相変わらず隙だらけの姿。 俺は一瞬で殺気をまとう。 もう一人の俺が俺を止めている。 刀を抜くなと。 この人にだけは切っ先を向けてはいけない。 そうしたらきっと、俺は戻れなくなる。 殺気を隠そうともしない俺の頭に、大きな手が触れる。 あたたかくて優しい手だ。 顔をあげると、旦那がチャイナにするように俺の頭を撫でていた。 俺を子供扱いする撫で方。 ずっと前に撫でられたとき、旦那との差を感じるから嫌だと、俺は言った。 旦那は面白そうに笑っていたけど。 今は何故かそれが心地よくて。 旦那はずるい。 だって俺は思いだしたんだ。 この世界はモノクロじゃない。 姉上を置いてまで選んだ真選組も、こんな旦那とのひとときも、姉上と同じくらい大切で、愛おしくて、失いたくないものだって。 旦那はずるい。 本当にずるい。 気がすんだのか、それとも俺の殺気が消えたことを見てとったのか、旦那は撫でるのをやめた。 金を払って(本当に旦那の奢りだった)立ち上がる。 「だ、旦那!」 慌てて着物の裾を掴む。 振り向いた旦那の顔は変わらない笑顔。 「またな、総ちゃん」 こんなときなのに、旦那は姉上と同じ呼び方で俺の名前を呼んだ。 心の奥がぎゅっとなる。 切なさを感じている間に、旦那は立ち去ってしまった。 嬉しさと悔しさと悲しさがごちゃごちゃになって、ありがとうと何度も心の中で叫んだ。 姉上が死んだ。 唯一の肉親。 俺の大切な人。 俺の世界。 俺は世界を失った。 だけど世界はモノクロじゃない。 光を浴びた世界は以前より鮮やかだ。 俺のために残された団子を、俺は貪り食った。 涙の味がしたような気がした。 +end+ +++++ 多分アニメでミツバ編があった頃に書いたもの。 沖田くんはこんなに弱くはないと思う。 20??.??.?? |