「オイ、どうしたんだテメエ!」
 土方がいきなり倒れ込んできた銀時を受け止めると、すでに銀時の意識はなかった。
 荒い息を赤い顔、そして高い熱。どうやら風邪のようだ。
 幸い、真選組の屯所はこの近くだ。つれていってやるかと妙な気が起こる。銀時を半ば引きずる形で背負い、ゆっくりと歩く。
「ったく、こんなところで倒れてんじゃねぇよ」
 万事屋からここまでは相当な距離がある。熱の出たこの体で、一体何をしていたのか。この男のことだ。どうせくだらないことなのだろう。
 他の隊士――特に沖田――に気付かれないようにこっそりと副長室に運ぶ。土方すら滅多に使わないこの部屋には、誰も足を踏み入れない。
 銀時の高い熱と荒い息は変わらず、風邪のひどさを物語っている。布団に寝かせ、額に濡らしたタオルを放り投げる。それから薬を飲ませようとして。
「どうやって飲ませんだよ……」
 薬がなくても治るといえば治る。しかし、だからといって銀時をいつまでもここにいさせるわけにもいかず、薬のおかげで早く治るのならばそれに越したことはない。できるだけ早く出ていってもらいたいのだ。
 薬を手に固まっていると、銀時がゆっくりと目を開けた。
「あ……何、ここ、どこ?」
 虚ろな目で視線を彷徨わせ、死んだ魚のような瞳が土方を捕らえる。
「多串、くん?」
 やる気のなさそうな声が、今は死にそうに感じる。何故かやるせない。
 土方は言葉に詰まったが、すぐに口を開いた。
「ここは真選組屯所だ。テメエはこの近くでぶっ倒れてきたんだよ」
「なんで俺こんなとこに来てんの」
「んなこと知るか!! とにかく、起きれんなら薬飲め、薬」
 土方は薬を水を渡す。が、体に力が入らないのか、銀時は受け取り損ねてとり落としてしまった。寝具の上に染みが広がっていく。
「あ、わりぃ……」
 土方は舌打ちをして湯呑を拾った。水を汲み直し今度は自分で口に含む。
「何すんだ……」
「黙ってろ」
 起き上がろうとする体を押さえつけて唇を重ねた。
 水を飲ませるための行為だ。他意なんかない。
 そう自分に言い聞かせながら。
「ん……ふ……ッ」
 水を飲ませるだけなのに、銀時の唇からは甘い吐息が抜ける。土方の心臓が思い切り跳ねた。
(なんでこんなドキドキしてんだ。深い意味なんかねぇ。ないはずだ)
「ないんだよ!」
 土方の大声に銀時が顔を顰めた。
「何言ってっかわかんねーよ。でさ、多串くん。できれば薬も飲ませてくんね?」
「そんだけ喋る気力があんならテメエで飲めんだろ」
「病人には優しくしろよ、副長サン」
「……チッ。仕方ねぇ」
 大きなため息をつき、土方は薬に手を伸ばす。が、突然ピタリと手を止めた。
 銀時に薬を飲ませるということは、再度銀時に口づけるということだ。言いだした本人は熱のせいかよく理解していないようだ。期待を込めた目で土方を見つめている。
 土方は意を決し、銀時の枕元に腰を下ろした。
「口開けろ、ほら」
 意外にも銀時は素直に従った。また減らず口を叩くかと思っていた土方だったが、少し拍子抜けした。
 そっと唇を重ねる。銀時の口の中は甘い。彼の好む糖分か、それともキスの甘さか。特別な思いのないキスだ。きっと糖分に違いない。
「ふぁ……」
 銀時が息を吐く。水と薬を流し込んで、銀時の喉が嚥下したのを確認してから唇を離そうとしたのだが。
「……んッ!?」
 銀時の腕が土方の頭を掻き抱き、さらに密着させてくる。それはまるでキスを強請っているかのような、そんな動作。互いの唾液が混ざり合い、音を立てる。風邪のせいか、普段のこの男からは想像もつかないたどたどしいキスが編に土方を煽る。
(こいつは巧いんだと思ってたのによ……)
「っふぅ……ん……ッ」
 土方の手は無意識に銀時の体の上を彷徨い、服の上から突起を引っ掻いた。
「んぁ……ッ!」
 甲高い声をあげ、銀時は身体を波打たせた。その腕はいつの間にか土方の服を握りしめている。
「……おい」
 長い口付けのあと身を起こすと、軽く息が上がっていた。息も絶え絶えな銀時に声をかけても、これといった返事はない。ただ、銀時は確実に感じていた。
 土方は小さく舌打ちをし、汗だくの服を脱がせた。荒い息と朦朧とした意識の中、銀時がぼんやりと尋ねてくる。
「……多串くん、何する、わけ……?」
「何するって決まってんだろ」
 膝の間に身体を入れ込み、緩く勃ち上がっている銀時自身を扱きだす。
「や、ちょ……多串く……ッ」
「お前が誘ったんだ」
 耳元で低く囁いて耳朶を甘咬みする。何をしても感じるのか、銀時は切なげに目を細めた。
「……ん、んぅ」
 理性は残っているらしく、銀時は唇を噛んで声を押さえている。面白くなくなって、土方は扱く手を止め奥に手を這わせた。途端に銀時の腰が跳ねる。
「あっ……! ヤだ、多串くん……!」
「土方だ。俺の名前呼べ」
 いいながら固く閉ざした蕾に指を差し入れる。銀時の先走りを絡めただけの指だったが、そこは難なく飲みこんでいく。
 声は抑えられなくなったようだが、あくまでも土方の名前を呼ばない銀時に土方はイライラしてきた。ナカをかき回していた指を引き抜き、膝裏に手を添える。
「テメエいい加減にしろよ……?」
「は? 何言っ……ああっ!」
 何の合図もせず奥に押し入る。絡みついてくるナカをかきわけて深くつき刺した。
「……あ、あぅ……ひっ……ああっ」
 そろそろと腰を動かすうちに感じるところに当たったのか、きつく締めつけてくる。
「……っく、ひじか……た、もぅやめろって……!」
 土方は満足げににやりと笑うと、やっと名前を呼んだその唇に口付けた。
「それでいいんだよ……銀時」
 きゅっとナカが狭くなった。その感覚を楽しみながら土方は何度も自信を穿つ。
「……あ、あァ……ダメ、土方ぁ……ッ」
「……ッ」
 銀時が達するのとほぼ同時に、土方も銀時のナカで解放した。






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「オメー……バカ、じゃねーの?」
「ああ?」
 余計ひどくなった喘息混じりの息を吐きながら、銀時が言う。自分の服を着れなくなった銀時は土方の着物を借りている。
「どこの世界に風邪ひいてる奴とヤっちゃって自分まで風邪ひく奴がいんだよ」
 銀時の寝ている布団の隣に、もう一つの布団が敷かれている。そこには同じく風邪をひいた土方が寝ている。銀時の風邪がうつったのか、土方までも風邪をひいてしまったのだ。
「うるせぇ。元はといえばテメーが俺の前に倒れ込んできたのが悪りぃんじゃねぇか」
「はぁ!? どこで倒れようと俺の勝手なんだよ」
「テメエいつか殺す」
 呆れ混じりにため息をつく。
 そもそも誘ってきたのは銀時のはずだ。怒られているこの状況に納得がいかない。
(あのキスはなんだったってんだ……)
 布団にくるまっている銀時が寝息を立て始めた。とりあえずこの状況を誰にも見られないように祈りながら、土方も目を閉じた。






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過去の遺物発掘。
羞恥プレイ以外の何ものでもない。






20??.??.??